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体操・村上茉愛、“恐怖の涙”を乗り越え五輪へ視界良好 「チュソビチナ」成功に見る24歳の確かな進化
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/12/18 11:01
全日本体操選手権の女子個人総合で2年ぶり4度目の優勝を飾った村上茉愛(中央)
東京五輪で目指す日本人初の快挙
あまり得意ではなかった段違い平行棒も、技をつなげることで連続技に与えられるボーナス加点を得て、Dスコアを18年までの5.5から5.9へ0.4上げた。こちらは今回、全日本選手権種目別を初制覇。指導する日体大の瀬尾京子監督は「段違い平行棒でトップを獲れたことは自信になると思う。やっと4種目がそろったという印象を持った。自分の体を自分の意思で動かせている」と評価した。
村上自身は、「平均台のほうが先に14点台に乗せられるかなと思っていたけど、段違い平行棒が先だったのでびっくりした」と振り返りつつ、東京五輪に向けては「すべての種目で14点台以上をそろえて、合計57点台後半から58点を狙っていく」とプランを掲げた。59点台後半の実力を持つシモーネ・バイルズ(米国)は手ごわいが、アジア人が五輪で女子個人総合メダルに輝けば08年北京五輪銅メダルの楊伊琳以来となる。日本人なら初の快挙だ。
「私はメダルを獲るんだ」という意欲を感じる
村上は言う。
「これまではEスコア重視でやってきたが、19年に代表から離れて日本代表を傍から見ることになったとき、ここに食らいついていかないと自分自身も勝てないし、日本全体も強くならないと思った。代表に戻って戦っていかないといけないという思いが、新しい技を取り入れて強くなっていこうという決意につながった」
言葉が示す情熱は、15年から村上を見続けている瀬尾監督が「オリンピックを目指し、私はメダルを獲るんだという強い意欲を普段から感じる」と証言していることからも伝わる。
全日本選手権の会見で村上は、平均台で14点に届かなかったことについて触れ、この先もジャンプ系の技の細かい修正を詰めるなどして0.1点を拾う取り組みを継続していくことも強調していた。
慎重に、ときに大胆に。両方のバランスを取りながら、エースはさらにレベルアップしていく。