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“NBA一筋”の渡邊雄太に手を差し伸べたラプターズ たった1つの枠を争うライバルとなる2人とは?
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/12/08 06:00
昨季までグリズリーズと2ウェイ契約を結んでいた渡邊雄太。キャンプに参加することが決まったラプターズで生き残りを懸けたアピールを続ける
渡邊自身も理解している「下のほう」
キャンプに招待されたといっても、ロスターに入る保証はない。20人招待されたうち、ロスターに入れるのは2ウェイ契約も含めて最大17人。渡邊は参加選手のなかでは最も立場が弱いノンギャランティの契約選手だ。渡邊自身も、そんな自分の立場は十分に理解している。
「自分の現状で言ったら、チームのなかで(の立場は)下のほうになる。だからといって、チャンスがないわけじゃないですし、ここでしっかりアピールできれば、この先も十分生き残っていけるとは思っている。ギャランティの選手とか、今ロスターにいる選手を蹴落としてでも自分が残りたいという気持ちは当然ありますし、そういうことをやっていかないと、この先、生き残っていけないと思う。そういう強い気持ちは常にもっていかないといけないなというふうには思っています」
2シーズン前の優勝を知るナースHC
ラプターズは2シーズン前の優勝チームだ。当時の中心選手の半分は入れ替わっているが、それでも、オールスター選手のカイル・ラウリーやパスカル・シアカム、そしてヘッドコーチのニック・ナースなどが残っており、勝者のカルチャーは今もチームに脈打っている。渡邊自身、そういったところにもチームの魅力を感じているという。
ナースHCは、彼自身、ヨーロッパのなかでもあまり強いとは言えないイギリスのプロリーグでのコーチからスタートし、マイナーリーグなどを転々としてラプターズのヘッドコーチまで上り詰めた人。チャンスをつかむために、色々なスタイルを勉強し、ラプターズのHCとしても時に奇抜な戦術も使ってくる。
特にディフェンス面では、様々なシステムを用い、相手や局面によって繰り出してくるのが特徴だ。それだけに、新しく入った選手にとっては、システムを覚えるのが大変なチームのひとつと言える。今季は特に、トレーニングキャンプの期間が短いため、ナースHCも新加入選手もディフェンス・システムの習得が懸案材料だと語っている。
「チームに新しく入ってきた選手が、どれだけ早くディフェンスを習得できるかというのは、いつでも気になっている。ディフェンスのカバレージのニュアンスや用語、戦術などを短期間で教えるために、追加練習が必要になるかもしれない」(ナースHC)
この状況は、渡邊にとってはアドバンテージになり得る。
「対応力、適応力は自分自身、すごくあると思っている。新しいことを教えられても、すぐに覚えたりすることもできますし、そういった意味では楽しみですね」と自信をのぞかせる。