なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
188センチGK山根恵里奈が29歳で引退の理由 スペインで言われた「自分を傷つけすぎている」の意味
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byItaru Chiba
posted2020/12/04 17:00
今季限りでの現役引退を発表した山根恵里奈。プレッシャーから解放され、取材中には笑顔がこぼれた
中2でGKに転向、JFAアカデミー福島へ
広島県出身のサッカー少女は、中学2年の時にDFからGKにポジションを変えた。JFAアカデミー福島の1期生として越境入学した高校時代は、すぐに頭角を現して年代別代表に招集された。2009年に東京電力女子サッカー部マリーゼに加入すると同年12月に日本代表からの初招集を受け、翌2010年1月のチリ戦で初キャップを刻んだ。
「なでしこジャパン」がW杯を制して世界一の座に君臨し、女子サッカー界の様相が一変したのはそれから約1年半後のことだ。体格の不利を打破して「世界で勝ち続けるため」に、188センチの長身GKは新世代のアイコンとして持ち上げられた。
いつかのテレビ番組の取材に、彼女はこう答えている。
「私が日本のゴールを守るようになったら日本のサッカーは変わるんだって、ノリさん(佐々木則夫監督)がずっとおっしゃっているんで。そこまで言われたら、やるしかない」
「動けない大巨人」と書かれて
しかし、望まれた結果は出なかった。山根はレギュラーに定着することができず、世界中のサッカー選手と同じように大事な試合でいくつかのミスを犯した。必然的に、いつしか正当な批判に混じって誹謗中傷の声が届くようになった。
「イヤでした。もう、ずっと。『動けない大巨人』とか書かれて、なんでそんなこと言われなきゃいけないんだろうって。自分がデカいことを日々恨むというか、とにかくミスしちゃいけない、絶対に間違えちゃいけないと思いながらプレーしていました。
でも、そんなことを考えていたら力なんて出せないですよね。それもわかっているから見ないようにと気をつけるんだけど、結局入ってきちゃうんです。で、あれもダメ、これもダメ、結局自分自身がダメなんだって。そうなると、自分のいいところを見つけられなくなる。もし見つけそうになっても、『そんなはずはない』とひたすら否定し続ける。完全に、そういうサイクルに入っちゃってました」