スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
エプスティーンの辞任とカブスの動揺。球界の風雲児が去って「チーム再建」はどう進められるのか?
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/12/05 06:00
エプスティーン氏(左)と後任のホイヤー氏(右)。新体制のカブスがどのようにチームを再建していくのか注目が集まる
2001年、ルキーノがレッドソックスのCEOに就任したときも、迷わずあとに従った。翌02年、ルキーノは、エプスティーンをGM代理に指名し、同年11月、彼は「史上最年少のGM」に就任する。
エプスティーンは、チーム改造に着手した。足を使うスカウトの側面と、セイバーメトリクスに精通する側面を兼ね備えた人だけに、決断は剛胆だった。03年、ALCSでヤンキースに敗退すると、監督をグレイディ・リトルからテリー・フランコーナに代え、カート・シリングやキース・フォークを獲得して投手陣を強化した。
さらに翌年には、守備力が急に衰えた看板選手ノマー・ガルシアパーラをトレードに出した。非難囂々の決断だったが、代わりに獲得したオーランド・カブレラやダグ・ミントケイヴィッチといった脇役が渋い活躍を見せる。この思い切った一手が04年のワールドシリーズ制覇につながったことは、いまや定説となっている。
どん底のカブスも……
07年にもレッドソックスをシリーズ制覇に導いたあと、エプスティーンは、11年にカブスの球団社長に就任した。
当時のカブスはどん底である。11年と12年が、ナ・リーグ中地区6球団中5位(6位のアストロズが超絶的に弱かった)、13年と14年が5球団中5位(アストロズはア・リーグ西地区に転出した)。
エプスティーンは、その時期を球団再建に当てた。攻撃陣ではクリス・ブライアントやアンソニー・リゾといった若手の成長を待ち、投手陣ではジェイク・アリエータをオリオールズから獲得して、着々と戦力の底上げを図ったのだ。