同じ宿舎でラジカセやらステレオやら

　簡単に映像を見れる時代ではなかったですが、当然彼らの存在を意識していました。私たちもマラドーナやディアスがいるアルゼンチン代表とやることは目標の1つでしたから。

　私も含めて学生が主体だった日本代表とは異なり、彼らはもうプロ。宿舎では私たちの上のフロアがアルゼンチン代表の部屋だったのですが、ラジカセやらステレオやらを持ち込んで音楽をガンガンかけていた。お金もあったでしょうし、そういうオンとオフの使い分けもうまくて何もかも違う雰囲気でした。

オフ中は悠々自適なマラドーナ©Getty Images

　日本がグループリーグで敗退したことで対戦するという夢は叶いませんでしたが、ただ同じ大会を戦えたことは私たちにとって誇り。ちなみに「10番」ではなかったのですが、11番のカルデロンという選手とユニホームを交換しました。今でも大事に持っています（笑）。

　試合会場が別だったこともあって、マラドーナたちの試合は映像で観ていた記憶があります。やっぱりピッチでもズバ抜けた存在。相手が何人いてもドリブルで抜けるし、無理な体勢からでも難なくシュートを打つ。本当に今まで見たことがないタイプの選手でした。チームを優勝に導き、個人としても5試合6ゴールでワールドユースMVP。注目される中でしっかりと結果を残すあたりが格が違いますよね。

ワールドユースでも勝負強さを見せつけた©AFLO

一番印象深いのはイタリアW杯の……

　世界デビューを果たしたマラドーナはそこから4大会W杯出場など、スターへの階段を瞬く間に駆け上っていきました。“マラドーナの大会”と呼ばれた86年W杯メキシコ大会ではアルゼンチンを見事、優勝に導くスーパープレーをたくさん見せてくれましたが、私の中で一番印象深いシーンは90年W杯イタリア大会でのブラジル戦（決勝トーナメント1回戦）です。

1990年W杯、ブラジル戦©Getty Images

　DF4人をドリブルで引きつけて、最後は倒れこみながら右足で相手の股を抜くスルーパス。フリーだったFWカニーヒアが流し込み、宿敵ブラジルを葬り去りました。

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