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「カントナ風な新ガスコイン」にウィリアム王子も熱狂! 問題児MFだが…ソックスと涙の親子秘話
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/11/30 17:00
アストンビラの攻撃をけん引するグリーリッシュ
レトロなソックスの履き方がシブい
アストンビラでのキャプテンシーは、2018-19シーズン終盤のダービー戦から芽生えている。前述の“ワンダー・ゴール”は、生え抜き選手として臨んだ記念すべき一戦で自ら放った祝砲でもあったわけだ。
同シーズン途中から指揮を執るディーン・スミスにとって、前体制下で開幕12試合1アシストのみだったグリーリッシュの本領発揮は、2部15位で受け継いだチームの蘇生に欠かせない課題だった。
自身もアストンビラのファンとして育った新監督は、怪我で3カ月間の戦線離脱から戻ったばかりの当時23歳をキャプテンに抜擢。その指名に「ビッグ・スマイル」で応えたと指揮官が明かしたグリーリッシュは、見事その期待に応えて、チームを5位フィニッシュに導いただけでなく翌シーズンのプレミア昇格に現実味を加えた。
カントナと言えば襟をピンと立てたユニフォーム姿も有名だが、グリーリッシュは足首の上でたるませるレトロなソックスの履き方が話題でもある。
今季開幕前には、移籍の噂があったマンUで同様のスタイルを好む名ドリブラーだった、ジョージ・ベストを真似たのだと報じられた。ただし実際には、偶然に生まれた験担ぎであることを、本人が地元の『バーミンガム・メール』紙で明かしている。
洗濯後、膝まで上がらないほど縮んでしまったソックスを履いてプレーしたシーズンの好調が理由だという。昨季のプレミアで最多となる167回のファウルを受けた「アストンビラのベスト」は、今季も丈の短い子供用シンガードを装着し、ソックスをたるませた足元から切れのあるドリブルを繰り出し続けている。
グリーリッシュは生粋の“ビラン”だ
もちろんクラブのサポーターにとっては、「アストンビラのグリーリッシュ」であることが最大の喜びに違いない。外国人の多い昨今のプレミアでは、クラブに絶対的な忠誠を感じさせる選手の存在は貴重。一軍にユース出身の若手が増え始めてはいても、彼らが示す愛着は育成元への恩義に基づく例が少なくない。
その点グリーリッシュは生粋の“ビラン”(アストンビラ・ファンの俗称)ときている。ユース入りは6歳、ビラ・パーク通いが始まったのは4歳! シーズンチケットを買ってくれた父親は1982年のヨーロピアン・カップ(現CL)優勝を、ロッテルダムのデカイプ(フェイノールト・スタディオン)で見届けているサポーターで、よくアウェイゲームに親子で出掛けていたそうだ。