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「カントナ風な新ガスコイン」にウィリアム王子も熱狂! 問題児MFだが…ソックスと涙の親子秘話
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/11/30 17:00
アストンビラの攻撃をけん引するグリーリッシュ
グリーリッシュの超絶ゴールをググると
現役当時のガスコインが演じた名場面の1つに、EURO1996のスコットランド戦で、相手DFの頭越しに浮かせたボールをボレーで捉えた得点シーンがある。最新の「二世」候補も、巧妙なタッチに加え、正確かつ強烈なボレーを自らのプレーに持つタイプだ。
グーグルでグリーリッシュの「ワンダー・ゴール」を検索すれば、真っ先に昨年3月のダービー戦(2部)で決めたボレーシュートが出てくる。
その1年ほど前、筆者は目の覚めるような一撃をスタジアムで目撃した。カーディフ戦(2部)で勝敗を分けたゴールだ。グリーリッシュが山なりのクリアボールを右足で捉え、約23mの距離から放ったシュートがポスト内側をえぐるように決まると、3万人を超すホームの観衆が「スーパー・ジャック!」と歌い出した。
アストンビラを愛するウィリアム王子も、スタンドのVIP席で立ち上がって喜んでいた。
筆者にとってのビラ・パークは、ヘビーメタル発祥の地とも言われるバーミンガムという土地柄か、試合前にハードロックが流れる会場としても好みのスタジアムの1つだ。
『クレイジー・ナイト』(キッス)と『クレイジー・トレイン』(オジー・オズボーン)が立て続けに流れたあの日、文字通りにホーム観衆を熱狂させたグリーリッシュの存在も、2014年の一軍デビュー以来アストンビラ戦に足を運ぶ楽しみの1つであり続ける。
バカンス先で泥酔した問題児イメージも
ユースから昇格してきた当初は、国産若手として過大評価されているとの意見もあった。卓越した個人技の持ち主は「身勝手」と見られもした。バカンス先で泥酔した姿をすっぱ抜かれた「問題児」的なイメージが、そうした見方に拍車を掛けていた。
しかし、ピッチ上での個性が自由を好む「アーティスト」的と評価されるようになった現在では、ピッチ外での行動に関してもメディアの見方が変わり始めた。
非難されて当然の行いではあったが、前回ロックダウン中の3月にパーティーに出掛けて車の接触事故を起こした一件に関して、『スカイ・スポーツ』解説者のガリー・ネビルは「カントナなら、きっと外出禁止令に背いていただろうな」とコメントしている。
グリーリッシュは、行動でチームを牽引するタイプのリーダーとしても、ネビルがいたマンチェスター・ユナイテッドの英雄、エリック・カントナ風と言える。