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国見から13年ぶりの高卒Jリーガー 札幌内定188cm中島大嘉の名前の由来はあの偉大なストライカー 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2020/11/13 17:01

国見から13年ぶりの高卒Jリーガー 札幌内定188cm中島大嘉の名前の由来はあの偉大なストライカー<Number Web> photograph by Takahito Ando

来季J1札幌入りが決まっている国見高3年FW中島大嘉。選手権予選の準決勝で敗れ、悔しい思いを滲ませながら撮影に応じた

国見に入って実感した大久保の偉大さ

 さらに名前の由来の1つとなった大久保嘉人に対する見方も大きく変わった。

「お父さんに大久保選手のプレー集を見せてもらいながら、『お前は嘉人より大きくならなあかんぞ』と言われていたことは記憶にあります。小さい時から大久保選手の家に遊びに行ったこともありましたが、身近な人がJリーグや日本代表でプレーしていて凄いな、程度。でも、いざ国見に入って自分が看板を背負うと『これが国見の魂なんだ』と思うようになりました。ゴールへの執着心は凄まじいし、アプローチも多彩。動き出しやゴール前の勝負強さは参考になりましたね」

 スケールの大きなストライカーとして着実に成長を遂げた中島は、高2の夏を過ぎるとJクラブから注目を浴びるようになった。高3になると複数のクラブからの具体的なアクションが知らされ、J1、J2の計4チームから練習参加の打診があった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で3月は1つのクラブしか練習参加できず、次の練習参加は7月まで延びた。

鳥取遠征での2発を見た札幌スカウト

 動きが限られる中で進路を迷っていた8月、彼にとって突然の出来事が起こった。

 7月下旬の鳥取遠征。最終日前日の強豪・米子北高校との練習試合で、中島はロングボールを受けると鮮やかなファーストタッチで相手DFをかわして独走すると、豪快な先制点を叩きだした。後半にもCKからヘディングで合わせて同点弾をあげる活躍を見せた。

 遠征から長崎へ帰るバスに乗り込もうとした時、中島は木藤監督に呼び止められた。そこには札幌の鈴木智樹スカウトの姿が。

「君にひと目惚れした。一緒にコンサドーレで頑張らないか」

 前述した4クラブの中に札幌はなく、中島にとっては予期していなかったことだった。すぐに正式オファーが届くほどの熱意は、彼の心を大きく揺り動かした。最初は戸惑ったが、札幌の試合動画を見返していくと、次第にチャレンジしたい思いが強くなったという。

「周りの人たちが『ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)の下でサッカーができるのは凄いぞ』と言ってくれたんです。ミシャさんのサッカーを知れば知るほど、ここでやりたいという思いが強くなったんです」

考え方が変わった鈴木武蔵の言葉

 決め手となったのがペトロヴィッチ監督の下で成長し、世界へ羽ばたいた鈴木武蔵の存在だった。

「武蔵さんは自分と似たプレースタイルの選手として大きなお手本でもありました。プレー集を食い入るように見ましたし、あれだけ大きいのにスピードがあって、裏抜けがうまい。特に札幌では背後に抜けてからのゴールが多いのに気づいて、僕のプレースタイルに合うのではないかと思ったし、強みをもっと磨けると思ったんです」

 内定が決まる前、施設見学に訪れた際、帰りの空港でベルギーに経つ直前の鈴木武蔵と話をする機会に恵まれた。

「身体能力でとった点もいいけど、FWとして嬉しいのは、やっぱり“頭”を使って決めたゴールだよ」

 鈴木の言葉に震えが走った。これまで身体能力に頼っていたことに気づき、より駆け引きやタイミングを計っていくことの重要性を学んだ。鈴木はさらに中島にこうアドバイスを送った。

「他のチームの色がついてから札幌でやるより、1年目の真っ新な状態でミシャさんのサッカーに染まった方が早くフィットできるし、成長できる」

 迷いが一気に吹き飛んだ気がした。札幌で一からミシャサッカーを吸収し、鈴木武蔵のように日本代表、海外へとステップアップしていきたい。頭の中で成長するイメージが明確にできたのだ。

【次ページ】 選手権予選敗退、堪えきれなかった涙

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