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自動車部品の検品をしていた遠野大弥はなぜフロンターレに? 「1年は待てません」から始まった福岡生活 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byJ.LEAGUE

posted2020/11/10 17:00

自動車部品の検品をしていた遠野大弥はなぜフロンターレに? 「1年は待てません」から始まった福岡生活<Number Web> photograph by J.LEAGUE

JFL王者・Honda FCから川崎フロンターレに加入した遠野。プロ1年目はレンタル先のアビスパ福岡でJ1昇格を目指し、戦っている

長谷部体制にマッチした遠野の武器

 今季の福岡は、新指揮官に長谷部茂利氏を迎え、大きな変革を掲げたタイミングだった。前線からプレスをかけてボールを奪いに行くサッカーを志向する中、運動量と相手の間でボールを受ける技術、そしてフィニッシュの精度に長けた遠野はすぐに重宝される存在となった。その信頼は決してチーム内だけに留まらない。声を出しての応援が制限される中でもサポーターが遠野のチャントを作ったことが、何よりもそれを物語っているだろう。

 高校時代から彼を知る立場として、確かに今季の遠野は劇的な進化を遂げている。プロでの試合をこなすごとに予備動作の質がメキメキと向上し、ボールの動きと相手のアクションを見て、「ここぞ」のタイミングでゴール前のエリアに侵入する。時には相手の逆を突く動きも組み入れ、ターンからの仕掛け、裏への抜け出しと、バイタルエリアでの動きは実に多彩だ。

 この成長の要因を問うと、彼に影響を与えたものが窺い知れた。

古橋達弥、城後寿に刺激を受けて

 遠野が「僕の憧れ」と語るのは「ミスターHonda」と呼ばれる古橋達弥だ。本田技研工業サッカー部からキャリアをスタートさせ、23歳の時にHonda FCからJ1セレッソ大阪へステップアップ。そこからモンテディオ山形、湘南ベルマーレを経て、14年からは再びHonda FCでプロ契約選手としてプレー、40歳になった今も躍動するレジェンドである。

「僕はタツさんのプレースタイルが大好き。フリーになるのがすごくうまくて、ボールの受け方が特にうまい。さらにパスセンスもめちゃくちゃあって、動けばパスが出てくるし、自分でゴールも決められて、もうパーフェクトなんです。『自分もこうなりたい』とずっと思わせてくれた」

 高校を卒業したばかりの遠野は、古橋のプロ意識に大きな刺激を受けた。今でも試合前に古橋のプレー集を観ることがルーティーンになっている。

 福岡に来ると、今度はアビスパ一筋16年の城後寿にも衝撃を受けた。

「めちゃくちゃ走るし、ストイック。城後さんがあれだけ一生懸命走っているのに、僕らが走らないということはあり得ないですから。それでいてピッチ外ではお茶目で、僕のような駆け出しの選手にも優しく接してくれる。タツさんといい、これぞレジェンドだなと」

【次ページ】 フロンターレを見る目も変わった

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