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日本記録連発の田中希実に父が課した“地獄のような”練習メニュー 娘を指導する難しさと五輪への思い
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2020/11/01 17:03
10月に行われた日本選手権の女子1500mで快勝した田中希実。父と娘、2人の闘いは続いていく
父親として、コーチとして、娘をどう見るか
田中は10月に入ってから、日本選手権の800m、1500mをはじめ、5000mも含めて多くのレースに意欲的に出場し、それぞれ好成績を挙げている。当面の大きなターゲットは12月4日に開催される日本選手権・長距離種目の5000m。ここで優勝すれば、東京五輪出場が内定する。
「10月以降、また少し取り組み方を変えてきています。夏までやったことで一旦答えが出たので、今度はさらに先へ進めていこうという取り組みです。12月の日本選手権でその答えが出たらいいと思っています」
その先には東京五輪がある。
「世界一を決める大会で自己表現をするというのが目的であり、目標です。東京五輪に出られたら、5000mのラスト1周までトップ集団に絡みたい。絡んだ結果、何ができるかということも試したい。メダルや入賞とは簡単に言えませんし、結果として打ちのめされても、それでまた次のステージが見えてくる。打ちのめされたとしてもワクワク感が残る打ちのめされ方。新しい自分を目指すための場所を求めて頑張ってるという感じですね」
最後に、父親という立場から見た希実さんと、コーチという立場から見た希実さんに違いはありますか? と尋ねた。健智さんは「難しいですね」と笑いながら「違いはないですね」と続けてこう言った。
「自分たちの場合、同じところを目指して歩んでいる同志。そういうイメージです」
父と娘の絆で形作られる新しいスタイルが、快進撃の土台となっている。