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食事会場は授業中の教室のように…ドクター&広報が語る、日本代表の感染予防策と取材対応
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2020/10/30 17:02
練習中に笑顔を見せる南野拓実(右)と酒井宏樹ら。しかしこのトレーニングに合宿生活も、厳格な感染予防策が取られた
柴崎や川島、植田だけでなく西シェフらも
初めての試みだったから、カメラマンとのこれまでとは異なる距離感に戸惑う選手もやはりいた。
初対面のカメラマンと柴崎岳がぎこちないやり取りを交わしていたり、川島に「タメ語で」と言われたにもかかわらず、植田がついつい敬語でカメラマンに応えてしまったり。これはこれで面白いのだが、日にちを重ねるに連れて、互いに距離感を掴んでいく様子も見て取れる。
素の表情が垣間見られたのは、選手だけではない。麻生英雄、山根威信といったキットマネージャーや代表チームに同行する西芳照シェフにインタビューをすることで、代表チームを支える裏方にもスポットを当てたのだ。
選手やスタッフのさまざまな一面を届けるのと同時に心がけたのが、新型コロナウイルス対策に関する発信である。
「メディアの報道やSNSを見ると、今回の遠征について心配の声が挙がっていたので、我々はきちんと対策をしています、ということをお伝えしたかった。それにサッカー界が最初に国際イベントを開催することになったので、日本のスポーツ界をリードしていくという自負を持ちながら、コロナ対策の良い事例となりたい。そういう思いで発信していました」
鈴木武蔵がPCR検査を受けていたり、選手たちが学校の授業中のように前を向いて食事をしていたりする映像には、こうした思いが込められていたのだ。
1年ぶりとなる日本代表の活動を成功させたい、代表チームが試合をすることで日本に元気や勇気を届けたい――。
そんな願いのもと、選手やスタッフが細心の注意を払いながら、合宿は大きな問題もなく、順調に進んでいた。
しかし試合前日、カメルーン側に……
しかし試合前日、想定していたとはいえ、代表チームのスタッフを動揺させる出来事が起きる。
その一報を聞いたとき、広報の多田は「ひょっとしてこのゲーム、飛んでしまうのか?」と危惧したという。
試合前72時間以内に行なったPCR検査で、カメルーン代表の2選手から陽性反応が確認され、濃厚接触者ひとりを含めた3人がチームから離脱することになったのである。
(第4回に続く。NumberWeb以外の外部サイトでお読みの方は関連記事『「総合力の高いチームがW杯で勝てる」 コロナ禍の欧州遠征で日本代表が得た“2戦以上の価値”とは』よりご覧ください)