かつて共闘した相手チームの選手と抱擁

　それを聞いた進藤の気持ちは揺れを止めた。眼を赤くして「こんなに選手のことを考えてくれているなんて……」と言葉を詰まらせながらクラブハウスを後にしていった進藤の姿はあまりにも印象深かった。

　試合前にかつて共闘した相手チームの選手がミシャと抱擁するシーンは、当たり前の光景であり、シーズンを重ねるごとにそうした場面を見る回数は増えていく一方だ。それだけ、多くの選手と心を重ね合わせながら仕事をしてきたのだろう。

　昨季序盤に連敗を喫した際に、それまで試合時にはスーツ姿で采配を続けていたミシャがジャージを着て試合に臨んだことがあった。

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　試合後にそのことについて問うと、「なんとか悪い流れを変えたくてね」と微笑んだ。言うまでもなく、監督が服装を変えたからといってチームのパフォーマンスが上がることはない。だが、それでもなんとかして選手を勝たせたい。選手を「息子たち」と呼ぶ指揮官の想いを強く感じた出来事だった。ちなみに、この試合は快勝した。

　200勝という数字は、そうしたものが積み上がった結果である。

強化部長も認める「求心力」

「勝ちに値する内容の試合を選手たちはしてくれた」という敗戦はいくつもあった。カップ戦の勝利は200の中には含まれないが、今季のルヴァンカップ準々決勝でPK戦の末に敗退した際には「私はPK戦での負けが多い。オーストリアのカップ戦で二度、ACLでのFCソウル（韓国）との重要な試合もそうだった。そうした不運な宿命を選手に背負わせてしまって申し訳ない」と振り返ったこともあった。

　多くの悔しさや歯がゆさとも向き合わなければ、200勝という数字にはたどりつかない。

　今季もなかなか結果が出ず、未勝利の時期が長く続いたことがあった。「そういう時期であるにもかかわらず、選手たちからの求心力がいっさい揺らいでいない。これはすごいこと」と竹林京介強化部長は見ていた。京都や名古屋で数多くの監督と接し、J1優勝なども経験している彼もミシャは特別な指揮官だととらえている。

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