フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
昨季は弟の死、今季は唯一のカナダ代表…メッシングが重圧の中、スケートアメリカ銅メダル
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2020/10/27 11:00
左から、2位ビンセント・ジョー、優勝したネイサン・チェン、3位のキーガン・メッシング。マスクをつけての撮影となった
昨年の大会は「ほとんど記憶が飛んでいる」
そんな中でもSPはほぼノーミス、フリーも4トウループを2度きめて、メッシングは銅メダルを手にした。
実はメッシングは昨年のこの大会で、SP3位になるもフリーで失敗してメダルを逃している。弟を交通事故で亡くした数週間後のことだった。
「実は昨年のこの大会のことは、ほとんど記憶が飛んでいるんです。フリーを滑っている最中に、自分はどうしてこんなことをしているのだろう、と思ったことはボンヤリ覚えています。でも今年は、自分が良い演技をしたいというモチベーションが見つかった。大会に出ることができなくなったカナダの仲間たちのために滑りました」とメッシングは言葉を結んだ。
技術を競うだけではなく、観客に向けてパフォーマンスするフィギュアスケーターにとって、空っぽの会場で演技をするのはどうなのだろうか、と懸念していた。
だが客席に置かれたカードボードや、拍手と歓声の入った録音が流れたことは助けになったとチェン。「でもちょっと不気味でもありましたけど」と苦笑した。
6大会中、スケートカナダとフランス杯は現地での感染率上昇に伴い、中止となった。北京で予定されていた12月のGPファイナルは、現在延期と発表されたまま、見通しはたっていない。次は2週間後の中国杯になる。