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昨季は弟の死、今季は唯一のカナダ代表…メッシングが重圧の中、スケートアメリカ銅メダル
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2020/10/27 11:00
左から、2位ビンセント・ジョー、優勝したネイサン・チェン、3位のキーガン・メッシング。マスクをつけての撮影となった
「友好的に師弟関係を終了しました」
ジョーは1年前、ブラウン大学に進学してGPシリーズを欠場。12月に休学し、トロントに移ってリー・バーケルとローリー・ニコルに師事したが、パンデミックを機にコロラドに戻ったと聞いた。
現在のコーチ状況は一時的なものなのか、と聞くとジョーはこう答えた。
「リー(・バーケル)とは話し合いをして、友好的に師弟関係を終了しました。彼からは多くのものを学びました。現在のメインコーチは、クリスティ・クラールとミエ・ハマダです」
誕生日の感想を聞かれると、「20歳になって、10歳よりも30歳に自分が近づいたかと思うと怖いような気がする」と苦笑した。
「カナダの仲間のために滑った」と3位のメッシング
3位に入ったのは、カナダのベテラン選手、28歳のキーガン・メッシングである。
「演技前は、ものすごく緊張しました。どれほど緊張したか、言い表せないほどでした」
その理由は、スケートカナダがオンタリオ州の感染拡大によって中止になり、結局メッシングが今季のGPシリーズに出場する唯一のカナダ選手という責任を背負っていたためだった。
またパンデミックの影響も、アラスカ州でトレーニングをするメッシングにはもっとも大きかったようである。
大会に向けての準備は問題なかったのかと聞かれると、メッシングは、「ぼくのリンクは、本来は強化選手がトレーニングをするような設備のある施設ではありません。これまで振付を頼むときは、他のリンクに出張していました。でも今季は移動することもできずに、まともなトレーニングを続けていくことは本当に大変だったんです」と答えて、うつむいた。
仲の良いナム・グエンとビデオチャットなどで励まし合い、どうにかモチベーションを保ってきたのだという。プログラムは、SPもフリーも昨季のものを継続した。