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“投手不足”楽天は慶大エース、「早川外れ」でロッテ1位は…ドラフト全指名予想【楽天・阪神・ロッテ編】
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJiji Press
posted2020/10/25 11:03
慶応大の右腕・木澤尚文
獲った、獲った、サウスポー4人
その先も、いやあ、獲った、獲った、サウスポーをなんと4人。
慢性的な左腕不足に悩んできたチームだ。今季終盤で、元メジャーリーガーのチェン・ウェインを補強したが、日本人の若手左腕といえば、わずかに、2年目小島和哉、中村稔弥にメドがつきかけているのみ。「いる時」に獲っておきたい。
手足の長い長身左腕で高校生なら、変化球に決め手がなくて、コントロール不安というのが通り相場だが、松本にはそれがない。持ち球はおそらく5種以上、スライダーとチェンジアップはいつでもストライクが奪えて、スピードも140キロ前半がアベレージ。プロで「勝てる条件」が揃っている。
小柄な左腕だからリリーフ向きといわれる3位・山野太一(東北福祉大)だが、左腕の財産であるクロスファイアーにスライダーとチェンジアップで「放射線状」の球筋が作れる石川雅規(ヤクルト)タイプ。むしろ、先発で面白い。
加えて4位根本悠楓(苫小牧中央)、7位太田大和(山形中央)の高校生左腕も獲得。20歳前後の左腕の層が一気に厚くなった。ヒジの使い方が独特でしなやかな腕の振りに将来性を秘める根本に、やはり猛烈な腕の振りを武器に一心に攻め立てる投げっぷりが若々しい太田。全国的には無名かもしれないが、間違いなく「実力者」だ。
「社会人球界のアジャ」
遊撃手の一角である平沢大河が右ヒジクリーニング手術。そうでなくても、将来のショートストップを託せる若手が見当たらない中で、2位・中山礼都(中京大中京高)はうってつけの人選だったろう。
今のプロ野球は「打てるショート」の時代。それに見合ったスイングスピードとフィールディングスピードを兼備して、精度アップ次第で“3割”も望める素質の持ち主だ。
2年連続24弾、「アジャ」の愛称の人気者・井上晴哉だって、ドラフト指名は“5位”だった。
6位片山勢三(パナソニック)は「社会人球界のアジャ」である。2年目の昨季がもう一つだったから、やや評価を下げているが、逆に、獲るなら今のうちだ。
逆方向の右中間のいちばん深い所に、さりげなく放り込む柔軟性とパワー。175cm105kgでも、ビックリするような機敏な守備ワークと“俊足”は、まさに「アジャ」以外の何者でもない。
そのポジションが強い時に「次期」を準備するのが、本当の意味の「補強」であろう。