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【引退】高橋朋己を忘れるわけがない…太く、短い8年間 西武の低迷期を支えたあの働き
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph bySeibu Lions
posted2020/10/22 11:00
20日に引退会見を行った高橋朋己。プロ通算160試合で6勝5敗52セーブ、防御率は2.74。「太く、短く」プロ野球人生を全うした
18年オフに育成契約、背番号43は……
2016年に左肘内側側副靭帯の再建手術を受け、2017年はほぼ丸1シーズンをリハビリに費やした。
復帰して迎えた2018年、シーズン開幕2戦目に登板した際、今度は左肩を痛め緊急降板する。そのまま再びリハビリの日々へ。2018年のオフ、育成契約となる。ただし球団の高橋への期待は変わらなかった。背番号43を空けたまま、復帰を待つことを明言した。
期待に応えるように、2019年の秋の教育リーグで復帰登板を果たし、リハビリは順調に進んでいるように見えた。
開幕前の表情は穏やかだった
20日の引退発表前、筆者が最後にインタビューをしたのは今シーズンの開幕前だった。まだ新型コロナウイルス感染症が拡大する前で、対面して今年への意気込みを聞くことができた。
高橋の表情はとても穏やかだった。
「肩の感覚は去年や一昨年に比べると、すごくいいです。去年、一昨年は強がって『もう全然痛くない』『行けます』って言ってたんですけど、実はめちゃくちゃ痛かったんです。でも今年は強がっているわけではなく、痛くない。やっと普通に投げられるようになって、やっと徐々に感覚が戻り始めています」
しかし、引退記者会見の席で、高橋こう明かした。
「今年の8月、バッティングピッチャーを務めたときに、すごく痛みがあった。ここまでいろいろなことをやってきても痛みが変わらないのなら、もう、だめだと自分の中で、いい意味での諦めがつきました」
痛みが引いたと安堵すると、再びぶり返す。希望を持った次の瞬間に、また痛みに絶望する。それがリハビリのつらさだと以前、故障を経験した選手に聞いたことがあった。リハビリは、終わりの見えない、果てしない道を行くようなものだ。そんな中でも、高橋は靭帯再建手術のあとトレーニングや栄養について猛勉強し、口にするものにも細心の注意を払って再びマウンドに戻ることを目指してきた。今シーズンの開幕後、何が起きたのか、会見の言葉だけでは計り知れないが、髙橋はプロ野球生活の引き際を、自分で決めることを選んだ。余程の決意だったはずである。
会見ではこうも語っていた。
「待っていてくれたファンの方たちには、復帰できなくて申し訳ない。待っていてくれてありがとうございました。そして、すみません」