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【引退】高橋朋己を忘れるわけがない…太く、短い8年間 西武の低迷期を支えたあの働き
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph bySeibu Lions
posted2020/10/22 11:00
20日に引退会見を行った高橋朋己。プロ通算160試合で6勝5敗52セーブ、防御率は2.74。「太く、短く」プロ野球人生を全うした
「オレのこと知らないんだろうな」「ワハハ」
今シーズン、開幕前の取材の話に戻る。
メットライフドームで、高橋がいない間も、背番号43のレプリカユニホームやピンク色の名前入りタオルを持っているファンを頻繁に見かけることを伝えると、パッと顔が輝いた。
「それ、ほんと、すごくうれしいですね。だって僕、基本、『西武ファンの人ってオレのこと知らないんだろうな』って思ってますもん、ワハハ。優勝してからファンになった人も多いと思うんですよ。僕、3シーズンしか一軍で投げていないし、この4年間、登板してないし。ほんのちょっとの期間しか試合に出ていなかったから……。それなのに、覚えてくれている人がいるのは、すごくうれしいことです」
低迷の2年間、チームをファンと救った高橋
ライオンズファンが高橋を忘れるわけがない。
高橋が最も活躍した2014年と2015年は、ライオンズにとって試練の年だった。
2013年オフにFAで片岡治大(現・巨人コーチ)と涌井秀章(現・楽天)が抜け、14年の3月、4月は9勝19敗と大きく負け越した。5月にはリーグ最速の30敗目を喫し、6月にはその年から就任した伊原春樹監督が成績不振と体調不良を理由に休養することとなる。シーズンの最終成績は5位。5年ぶりのBクラスだった。
翌2015年は球団ワーストとなる13連敗もあり、4位に終わる。決して忘れることができない苦難の時代だった。
そんな中、高橋の胸をすくような速球と、打者に立ち向かっていくピッチングが、数少ない明るいニュースだった。高橋の登場曲が鳴り響くと、ファンは勝利を確信し、球場は大いに盛り上がった。自分を飾らない、底抜けに明るい高橋の性格にも、多くのファンが救われたのではないだろうか。