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原辰徳監督、“デラロサ9回2死降板”の真意 「次の戦い」へ重圧の中でしか試せないこととは
posted2020/10/23 11:45
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
少し怒気を含んでいるように聞こえた。
「いまそんなことを考えていたら、必ず足元をすくわれる!」
まだコロナ禍がこれほど日本中に大きな影を落とす前の2月のキャンプで、だった。
巨人・原辰徳監督のインタビューの最後にあることを聞いたときの反応である。
「ソフトバンクに勝てるチームをどう作るのですか?」
監督復帰1年目の2019年シーズンは5年ぶりにリーグの覇権は奪回したものの、日本シリーズでは、ソフトバンクにまさかの4連敗。負け方が負け方だっただけに「リーグ優勝が吹っ飛んだ」という親会社の読売新聞関係者や球団OBもいたほどだ。
そんなこともあり2020年の目標はリーグ連覇はもちろんだが、やはり最終的にはソフトバンクへのリベンジを果たして、2012年以来8年ぶりの日本一を手にすることにあるはずだとも思った。
目の前の1試合を勝ち切ることに全力を注いだ
そこで飛び出た質問に、指揮官の顔はちょっと険しくなったのである。
「シーズン前から日本シリーズをどうだ、こうだと意識させる話をするのは、まったくナンセンスだと思っている。いまそんなことを考えていたら、必ず足元をすくわれる! あくまで日本シリーズというのは、ペナントレースを勝ち抜いたチームが、そこで短期決戦をやるものなんです」
まず目を注ぐべきは目の前にあるペナントレース。それをどう勝ち抜いて連覇を果たすか。そのことに100%、いや120%の力を注ぐことしかない。
それが原監督の答えだったのである。
その言葉通りに今年の巨人は、文字どおりに目の前の1試合を勝ち切ることに全力を注いできた。特にコロナ禍の中で、どれだけ注意を払って対策をしても、いつチーム内に感染者が出てもおかしくないという状況が続いていた。だからこそ尚更、監督の目はいまに注ぎ続けられていたのかもしれない。