結果を出さないと序列は崩せない

　大迫の代役として日本代表に呼ばれているわけではない。そんな自覚が早くも芽生えているようだった。しかし一方で、日本代表のエース格として君臨する大迫という存在は、鈴木にとって超えなければいけない存在であることは事実だ。

「大迫選手を超えないと代表では定着できない。超えるためには、Jリーグでプレーしていたら絶対に無理だと思ったし、ヨーロッパで大迫選手より評価を上げること、そしてゴールを決めないと、あの序列は絶対に覆せない。もちろん比べられたくはありませんが、FWである以上、そこは避けて通れないし、負けたくない。僕には結果を出して黙らせるしか道はないんです」

　今回は自身の技術、メンタルの部分での進化は少なからず感じ取ることはできた。だが、やはりゴールが欲しかった。

「FWだったら、どのチームでもどの国でも点を取らないといけません。自分でボールを呼び込んでゴールをこじ開け、自分の評価を掴み取る。そういう気概というか、ハングリー精神がまだまだ足りないと感じたからここに来た。それに代表に選ばれることが目標ではなくて、中心選手の1人になることが目標。点を取れなかった事実をしっかりと受け止めて、ベールスホットでもっと個のレベルを上げていきたい。

　コートジボワール戦でもトラップの置きどころだったり、ボールの運び方だったり、もっと精度を上げないといけないシーンがありましたし、バイリーの予測やスピード、ディフェンス能力の高さを感じることができた。もっと自分のプレーの細部までこだわっていきたいと思いました。それを肌で感じ取れたことも、今回の代表活動の大きな収穫です。また新たなスイッチを入れてもらいました」

26歳での挑戦は遅いのか

　今回の代表活動で、改めて自分が海を渡った意義を確かめることができた。同時に焦りも感じている。

「（南野）拓実なんか話している次元が違う。彼の周りには世界トップの凄い選手がたくさんいて、その日常がどれだけ凄いことか。それに世界的なビッグクラブにいるからと言って、拓実は横柄な態度を取る人間じゃないし、昔から知っている拓実のままだったので、本当に素晴らしいなと思いました。僕もここで終わるわけにはいかない。ステップアップできるチャンスはあると思いますし、主要リーグに行ける可能性があるなら、絶対にチャレンジしようと思っている。現状に満足せず、まっすぐに成長していきたいです」

　南野だけでなく、4大リーグ1部でプレーする選手は数多い。その舞台は鈴木が目指すべき場所の1つでもある。26歳という年齢はサッカー選手として若くはない。むしろ遅れを取っていると言った方がいいかもしれない。しかし、鈴木は自分の可能性を信じている。だからこそ、大好きなクラブと日本を離れて挑戦する道を選んだのだ。

【後編に続く】「鈴木武蔵が語ったベルギー移籍決断の真相と葛藤、そしてコンサドーレへの愛」へ