「対戦相手のピッチャーのデータを見て、自分の苦手なコース、打てるコース、これまで対戦した感覚などを頭のなかで整理するんです。自分はどんな攻められ方をするのか、狙い球はどれか。ヤマを張ってとんでもない空振りをすることもあるけど、そこは割り切っています。そして、とにかく追い込まれたら逆方向を意識する」

　理解はできるが知るかぎり、梶谷はレギュラーとして試合に出始めた6年ほど前から、データはもちろん相手ピッチャーをビデオで研究するなり、かなり対策は立ててきていたはずだ。

「たしかに。正直に言えば、頭の整理の仕方はあまり変わってはいないんです。これまでも準備はしてきていますからね。ただ今年は“実現”できているというか……」

　果たしてどういうことだろうか？

「以前は頭のなかでこうしたい、と思ってもできなかったことが今はできている。つまり頭で整理したことが、体で表現できているということなんです」

　それを可能にさせたのが“技術”だと梶谷は断言する。このオフから誰に言われるわけでもなく、自ら必要だと感じ逆方向へのバッティング練習をコツコツと続けてきた。

「引っ張って飛ばしたいという思いを抑えながら、根気よくそれを続けてきたんです。本当、地味な作業なんですよ（苦笑）。けど、それが今に繋がっていますね」

　実際、体は開かなくなって壁ができ、逆方向の打球は確実に増えた。

今季は「バットを立てない」打ち方へ

　あとはバッティングフォームだ。以前の梶谷は、脇を締めグリップを低く握り、上から叩く意識を完全に消し、レベルスイングからかち上げていた。ともすればアッパースイングに見えるほどだったが、今は左の脇を大きく開き、グリップを高くし、上から叩くようにインサイドアウトの綺麗な軌道を描いている。

　ただ、このフォームは昨年8月下旬に一軍昇格して以降、見せていたものと同じように映る。梶谷は微細な変化を教えてくれた。

「たしかに同じではあるのですが、トップに入るときのバットの使い方がちょっと違っていて、“ヒッチ”をなくしているんです。昨年はバットを1回立ててから打ちにいっていましたからね」

　ヒッチとは始動する際、グリップを上下させる予備動作だ。

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