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【2カ月連続のMVP】DeNAの韋駄天・32歳梶谷隆幸に聞いた「球団新記録“42”までの道のり」
posted2020/10/07 13:05
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
充足感を漂わせながら梶谷隆幸は、噛み締めるように言うのだ。
「今シーズンはいい疲労感をずっと味わえているというか、『疲れた……』って家に帰って言えるのがうれしいんですよね」
梶谷は、2020年9月度のセ・リーグ『大樹生命月間MVP』を獲得した。月間打率.378、安打数42、盗塁数7はいずれもリーグ1位であり、出塁率.427はリーグ3位と、文句のない獲得といえるだろう。横浜DeNAベイスターズにとっては前月の佐野恵太につづく2カ月連続の受賞であり、梶谷自身、2015年3、4月度以来、約5年ぶり2度目の栄誉となる。
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「よくわからない状態で獲ってしまった前回と比べ、違いはありますよね。今回は自分のなかで考えて積み重ねてきた結果というか、感慨深いものがあります」
獲るべくして獲ることができたということか。
「そう思えるようになれたらいいですね」
梶谷はそう答えると、静かな笑みを見せた。
「『あと1本で球団新記録だよ』と聞かされて驚いたんですよ」
受賞へのハイライトとなったのは、30年前にジム・パチョレックが、24年前に佐伯貴弘が樹立した球団月間安打記録『41』を超えた9月30日のヤクルト戦である。梶谷は前日の29日の試合で4安打を放ち球団タイに並んでいたが、それまで記録の存在をまったく知らなかった。
「ラミレス監督から常々『月間40本は打とう』と言われていて、9月は2試合を残してあとヒット3本でした。で、29日の試合で4本打ってイケたと思っていたら、そこで初めて『あと1本で球団新記録だよ』と聞かされて驚いたんですよ。だったら、もう超えたいなって。あの日は1本でいいので、とにかく出したかった」
梶谷は6回裏、二死2塁の場面で打席に立つと、石川雅規のインローの変化球を逆方向へ弾き返しタイムリー。2塁上で小さくガッツポーズをし、晴れて月間安打数『42』の球団新記録を樹立した。
見ていて感じたのは、打つべくして打ったヒットだったということだ。今季の梶谷は積極性もあれば粘りもある、確実性を増した一皮むけたバッティングを披露してきた。以前のことを思い出せば、目の覚めるような活躍がある一方、ここぞという場面で力み、凡退して天を見上げる姿が目立っていた。
「以前だったら力んでいたかもしれませんね。そんなことばっかり繰り返してきましたから」
自嘲するように梶谷は笑ったが、それはもう過去のことだ。