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理想的な上司と部下のように “キタジへの報連相”でトリニータ田中達也が再ブレイク
text by
柚野真也Shinya Yuno
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/10/07 06:00
シャドーの位置で活躍を見せている田中達也。“師匠”北嶋秀朗の教えが生きているようだ
キタジさんからの「かもしれない」
それは、かつて熊本で伸び悩み、結果を出せず苦渋を味わい、もがきながら練習するなかで成長したからこその思いとも言えよう。そして今、田中の周囲では、再ブレイクを期待する声が高まっている。だが、喧騒をよそに、田中はあくまでも目の前の勝利とゴールに集中する。
「ゴールやアシストは貪欲に狙っていくが、チームが勝たないとスッキリしない。1試合に全力を注ぐつもりだし、“キタジ”さんに『かもしれない』を大事にしろと言われ続けた。10回中10回走らないと得点はできない。それを心がけてやっていきたい」
「立ち位置で有利に立つプレーを学んだ」
田中を取材しているとしばしば出てくる「キタジ」という固有名詞だが、師匠であり、兄貴として慕う北嶋秀朗(現大宮コーチ)のことである。
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熊本で苦しんでいた3年目のとき、田中はコーチに就任したかつての大エースと出会い、全てが変わった。「以前はドリブルが好きだったが、キタジさんに戦術をたたき込まれた。立ち位置で有利に立つプレーを学んだ。今は常に優位性をつくり、仕掛けやすい状況で突破するのが好きになった」とは、昨季途中に大分に加入したときの話だ。
北嶋に出会う前の田中は、ボールを持てば猪突猛進。持ち味のスピードを駆使して、ドリブルを仕掛けた。しかし、北嶋と出会って以降は、ゴールやアシストという結果でサポーターを魅了する選手へと変貌を遂げた。チームメイトからも頼りになる存在と一目置かれた“キタジスタイル”の継承である。