格闘技PRESSBACK NUMBER

那須川天心は「打たせずに打つ」 皇治戦で浮き彫りになった2人の違いと、天心に残された時間 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph byRIZIN FF / Sachiko HOTAKA

posted2020/10/04 17:02

那須川天心は「打たせずに打つ」 皇治戦で浮き彫りになった2人の違いと、天心に残された時間<Number Web> photograph by RIZIN FF / Sachiko HOTAKA

皇治を圧倒した那須川天心は、キックボクシングに対し皇治とは違った考えを持っている

那須川の姿勢はキックボクシングの原点だ

「(バンテージを)薄くするか厚くするかでスピードが変わる。ただ、念には念をであえて厚めに巻きました。スピードは遅くなる可能性がありますが、安心して殴れるように(しました)。先端が重くなれば、戻しが遅くなる、そのためだけではないのですが、戻しのトレーニングも入れてます」

 また、永末トレーナーが指摘する「もらわずに当てる」という部分にも注目したい。この一言に那須川の格闘技に対する姿勢が如実に現れているからだ。

 旧K-1が誕生して以来、キックボクシングは「打ち合い」が主流を占めるようになったが、もとを正せば、ボクシング同様「打たせずに打つ」スタイルが主流だった。那須川の姿勢は、原点回帰という捉え方もできる。

 対照的に皇治のそれは現在の新K-1のスタイルを象徴するかのように、打ち合い上等に重きを置く。人によって好き嫌いはあると思うが、同じキックボクシングでも那須川と皇治の考え方は根本的に異なるのだ。

「天心より武尊の方が強い」の真意は…

 試合後、皇治が「天心より武尊の方が強い」と語った真意は「武尊は俺と打ち合ってくれた」ということではなかったか。もちろん逆に倒されるというリスクを伴う打ち合いには勇気が必要不可欠。実際那須川の攻撃でピンチに陥った時、皇治はそのまま下がるのではなく、前に出ることで決定打をもらわないという策を実行した場面もあった。那須川の攻撃をもらいながらも、前に出た勇気は称賛されるべきだろう。

 ただ、皇治はそれ以上の抵抗をすることはできなかった。というのも那須川はそれだけ精度の高い攻撃を仕掛けていたので、攻撃をブロックしてすぐ反撃するという展開に移ることができなかったと推測される。

 もうひとつ那須川の特色のひとつとして、攻撃の精度の高さを挙げたい。事実、那須川は「○△選手は攻撃が粗い」と評することが多い。攻撃の精度が高いか否かでKO率は大きく変わってくる。キックの世界ではKOは称賛されるが、精度の高い攻撃は意外と見落とされる傾向がある。

【次ページ】 キックボクサー那須川に残された時間は少ない

BACK 1 2 3 NEXT
#那須川天心
#皇治
#永末“ニック”貴之

格闘技の前後の記事

ページトップ