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那須川天心は「打たせずに打つ」 皇治戦で浮き彫りになった2人の違いと、天心に残された時間
posted2020/10/04 17:02
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF / Sachiko HOTAKA
瞬間最高視聴率で8.9%を叩き出したというのに、最初から最後まで両者の気持ちが通じ合うことはなかった。『RIZIN.24』(9月27日・さいたまスーパーアリーナ)で行われた那須川天心VS皇治は那須川が一方的に攻めまくる展開のまま、試合終了のゴングを聞いた。
那須川の盟友・白鳥大珠は「予想通りの展開だった」と振り返る。「(那須川が)圧倒的だったのは、さすがですね」。
巷の意見は十人十色。「やっぱり天心は強かった」と勝者を讃える声もあれば、「最後まで倒れなかった皇治は意地を見せた」と敗者を労う声もあった。筆者の目には両者のキックボクシングに対する考え方の違いが浮き彫りになった一戦に映った。
那須川天心の長所を活かす身体づくり
今回当たり前のように58.5kg契約で拳を交わした那須川と皇治だが、主戦場とする階級は異なる。皇治がスーパーフェザー級からライト級を主戦場にしているのに対して、那須川のそれは55kg級からフェザー級。今回はその間をとっての階級設定となった。
那須川のトレーナーを務める永末“ニック”貴之氏はSNSで皇治が階級が上の選手ということで水抜きなしの調整に努めたことを明かす。
「体重を増量してパワーを上げるという考えの方が多いと思いますが、相手が計量後に増量する事を想定して、スピード勝負で行く事に。もらわずに当てる。0.01秒でも速く動く。那須川の長所を活かして戦う身体作り(に努めました)」
永末トレーナーが語るように、スピードは那須川を語るうえで欠かせない要素だろう。以前から那須川も、自分の特性としてスピードをあげることが多かった。果たして今回もスピードの差は随所に現れた。那須川にスピードがあった分、皇治は那須川の動きにどんどん反応できなくなっているように思えた。
そのスピードに関して永末トレーナーは、バンテージの巻き方にも腐心したと打ち明ける。