濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
那須川天心、皇治戦で見せた“格闘技の本質” 「試合にならなかったというくらいの試合だった」
posted2020/09/29 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF / Susumu Nagao
これは強い、ただごとではない。そう何度も思わされた。試合中だけでなく試合後もだ。
9月27日の『RIZIN.24』(さいたまスーパーアリーナ)。メインイベントのキックボクシングマッチで、那須川天心はK-1から移籍してきた皇治を圧倒した。KO、ダウン奪取は逃したが3ラウンドすべてを支配してフルマークの判定勝利だ。
いや、那須川が強いことは今さら強調するまでもない。試合内容と同じくらい素晴らしかったのは試合後のコメントの“強さ”だ。彼は技術やフィジカルの向上とともに言葉を研ぎ澄ませてもいる。
「格闘技の本質が分かる試合だった」
たとえば7月に行なわれた前回の試合。笠原友希を1ラウンドで倒すと、フィニッシュとなった右フックについてこう語っている。
「こだわってましたね。練習でこだわってました。練習したことが出たというか、出るまで練習したんですよ。“そりゃ出るよな”って」
練習してきたことが試合で出せないのはよくあることだ。それが練習と試合の違いと言ってもいい。が、那須川はそこで思考を止めない。だったら試合で出るようになるまで練習すればいいと考える。那須川天心という選手の強さ、その一端は格闘技を掘り下げる思考力にあり、なおかつそれを言葉にして表現することもできる。その的確さは、試合のたびに増している。
皇治に勝つと、彼は取材陣に言った。
「格闘技の本質が分かる試合だったと思います」