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“なぜか話題にならない”原巨人・3人目の男 31歳丸佳浩「ひとり五連覇」への最終章
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byJiji Press
posted2020/10/01 17:30
例年とは異なるハードな日程、チームでただひとり全試合出場を続ける丸佳浩(9月30日現在)
思えば、同じFA組の小笠原道大もそうだった。男は黙ってフルスイング。黙々と試合に出続け、当たり前のように打席に立ち続けて結果を残す。ガッツは背中でチームを引っ張った。グラウンド上の丸もそうだ。何歳になっても、いい意味でそのプレーぶりはギラギラしている。カープ若手時代のオフには市内のトレーニングジムに通うため、一時寮を出てウイークリーマンションで一人暮らしをしたこともある。巨人移籍後もベンチで頻繁にメモを取り、その猛練習ぶりはチームを活性化させ、百戦錬磨の原監督をして「彼のペースにジャイアンツの選手が巻き込まれている雰囲気があるね」と驚かせた。
「えぐいっすよ。いつも100玉くらい食べてる」
今も昔も野球に貪欲。その姿勢は若手にも影響を与え、『スポーツ報知』19年優勝タブロイド号で丸の印象についてチームメイトたちはこう答えている。岡本は「とにかく、めっちゃ食べる。量がすごい。特に麺類を食いまくる。えぐいっすよ。いつも100玉くらい食べてる。マジです」なんつって驚愕のコメント。打てるキャッチャーとして開花した大城卓三も「食べる量がすごい。白米をめちゃおかわりします」なんて背番号8の規格外の食欲に圧倒されている。あれ? あまり野球に関係ない気が……じゃなくて、やっぱり球場では誰よりもハングリー。ついでにロッカールームではゲームと漫画の二刀流でリラックス。何事にも動じないマイペースぶりはナインを驚かせた。
これまで巨人へFA移籍した選手は計26名いるが、注目度の高さやプレッシャーに自分のプレーを見失うケースが多かっただけに、丸の図太さは新鮮だ。今季も開幕直後は調子が上がらず、6月の月間打率は1割台。7月15日の広島戦ではスタメンを外され、翌16日には昨季1度もない犠打を1試合で2度記録したこともあった。だが、長いペナントレース、好不調の波があるのは当たり前で焦らずマイペースにトータルで数字を出す。気が付けば、巨人の勝率とともに丸の打率は上昇していった。
アラサー転職できっちり仕事
なんて頼れる男だろう。31歳という年齢は、世代交代を図り、若返りの進む今の巨人ではベテランの部類に入る。昨年の『週刊ベースボール』ジャイアンツ優勝記念号で丸と対談したキャプテン坂本が、「思ったよりよく話す。ゲームの話も、野球の話も、プライベートなことも、結構いろんな人としゃべるんやな~と。一匹狼という感じではないけど、まさかここまで社交的とは」と笑っていたが、この1学年下の丸の加入は、絶妙なバランスでキャプテン坂本の負担もワリカンしてくれているのではないだろうか。