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レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダンにつきまとう“4つの問題” 「敗北を受け入れるのが監督の仕事だ」
text by
ザビエ・バレXavier Barret
photograph byMutsu Kawamori
posted2021/05/05 17:00
マドリ―を率いるジネディーヌ・ジダンには、4つの《しかし》がつきまとう
ロナウドに他の選手と同様の条件を提示
彼の成功の秘訣は、選手との緊密な関係にある。日がたつにつれ、そして勝利を重ねるにつれ、それは深まっていった。
「私は世界最高のクラブで、最高の選手に囲まれてとても満足している。だが彼らを統率していくための仕事をこなすには、膨大なエネルギーが必要だ」
かつてそう語ったジダンだが、その仕事とは“家族”と感じているクラブで、非情な決断を迫られることでもある。例えば'17-'18シーズンにジダンは、下位クラブ相手に大量得点しても評価は上がらないと説得し、ロナウドに他の選手と同様のローテーションを受け入れさせた。このシーズンのロナウドはリーガ出場27試合にとどまり、春先のアウェーにはほとんど同行せずに調整を続けた結果、CLでゴールを量産した。
欧州最高齢のグループは経験豊富か硬直か
《しかし》現在のマドリーは、欧州で最も安定したグループである一方、最高齢でもある。経験豊富な集団と硬直化した集団の差は紙一重だ。スタメン11人のうち8人が5年前から変わっていない。入れ替わったのはパリに移籍したGKケイロル・ナバス(クルトワがレギュラーに)と怪我がちのギャレス・ベイル(主にアザールが取って代わる)、そしていまだ後継者が見つからないロナウドの3人のみで、ジダンはずっと同じグループに頼っている。セルヒオ・ラモス(34歳)、マルセロ(32歳)、カリム・ベンゼマ(32歳)、クロース(30歳)、ラファエル・バラン(27歳)の主軸として頼る5人と、ルカ・モドリッチ(35歳)、カゼミーロ(28歳)、カルバハル(28歳)である。
キャプテンのラモスは、ただ一人ジダンと同じピッチに立った経験(ジダンの現役最後となった'05-'06シーズン)を持ち、選手と監督のつなぎ役として絶対的な信頼を得ている。クロースやベンゼマ、バランも同様だ。マドリーのようなヒエラルキーが確立したクラブで、監督との親密な関係はベテラン選手が地位を安定させるうえで大きな意味を持つ。だが、彼らのピークが過ぎたとき、それは逆に火種となり得る。