Jをめぐる冒険BACK NUMBER
Jを沸かせた“岡山劇場”の岡山一成は今何を? スペイン人女性監督からの指摘と絆、指導者のリアル
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2020/09/16 17:00
現役を引退し、指導者への道を歩み始めた岡山一成。その道は1年ほどなのに波乱万丈である。
「ライセンスを取らんと始まらない」
こうして岡山は'17年限りでスパイクを脱ぎ、セカンドキャリアへと踏み出した。
もっとも、指導者への想いを燃え上がらせたところで、すぐにチームを率いることができるわけではない。
「ライセンスを取らんと、始まらないですからね。現役時代の実績もあって、なんとかA級ライセンスの講習を受けられることになって。ただ、講習って年4回なんですよ。その間、何かせなと思って、いろんなところに声を掛けたんです。なんでもやりますんでって」
その結果、岡山が携わることができたのは、大学チームのアドバイザー、Jリーグ中継の解説、子ども向けのサッカー教室、JFAこころのプロジェクトの『夢先生』だった。
「飲食関係とか、指導者に繋がらん仕事はしない。サッカーに繋がることだけやるって決めていたんで。奈良クラブ時代に働きながらサッカーをやっていたんで、免疫はあったんですけど、キツかったですね。フリーは毎月が勝負。解説の仕事でも『ああ、今月は1試合しか来んかったか』とか、『おお、今月は2試合来た!』とか。でも、指導の勉強という点では、現場を見ることができて良かったです」
「A級取ったんで」と売り込んだが……
肝心のA級ライセンスも、インストラクターに「指導というのは簡単なものじゃない」と厳しい言葉を受けながら、なんとか'18年12月に取得する。
「さっそくいろんなクラブに売り込みました。『A級取ったんで、契約してください』って。でも、どこもダメで。そうやって声を掛けたひとつが、アンリミやったんです」
「アンリミ」とは三重県の鈴鹿市で活動するJFL(J4に相当)の鈴鹿アンリミテッドFC(現鈴鹿ポイントゲッターズ)のことである。
実は1年前の冬に奈良クラブを退団したとき、現役続行の選択肢がゼロだったわけではない。選手としてのオファーをくれたクラブがあったからだ。そのクラブこそ当時、東海リーグ1部(J5に相当)にいた鈴鹿アンリミテッドだった。
「でも、また奈良クラブ時代と同じことの繰り返しか、って思うと気持ちが燃えなくて。それより指導者の道に行こうと思って、断ったんですよ」