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巨人・岡本和真がゴールデングラブ最有力候補!? 名手・井端弘和が教え子の守備力向上を解説。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/09/04 15:00
本塁打も19本(9月3日時点)と四番の仕事をしているが、守備の成長も著しい岡本。目標のゴールデングラブ賞を獲れるか。
データ的には今季のゴールデングラブの最有力候補。
セイバーメトリクスで守備力を数値化した代表的な指標には、守備範囲の広さを表すRngRと総合的な貢献度を表すUZRという2つがある。
昨年の岡本の三塁手としてのこの2つの数字(データは全てDELTA社サイト、数字が大きくなればそれだけプラス評価になり、平均値以下はマイナス数値となる)はRngRが1.5(一塁手では-10.9)、UZRが-0.3(同-8.9)と、平均値かそれ以下という数値。
2つが共に両リーグトップだった阪神・大山悠輔内野手のRngR9.8とUZR7.9からは大きく劣る数値だったのである。
しかし三塁手に固定された今季はその数字が飛躍的に向上している。
今季の岡本のRngRは9.2、UZRは10.8でいずれも12球団のトップ。しかもRngRでは2位の西武・中村剛也内野手が2.3で、UZRも2位の中日・高橋周平内野手の数字は4.2でしかない。
文字通りダントツの数字を示す12球団一の三塁守備の名手へと成長している。データ的には今季のゴールデングラブ賞の最有力候補となっているということだ。
「やっと普通に足を動かせるようになった」
いったい何が岡本の守備を変えたのか。
「やっと普通に足を動かせるようになったということですよ」
こう語るのは井端さんだった。
「岡本の守備で一番の欠点は足さばきでした。人っていうのは右足を踏み出したら、次は左足を前に出す。これが自然な足の使い方ですよね。でも岡本は時々、右足を踏み出した後に右、右ってまた右足を出そうとするようなことがあったんです」
特にその不自然な動きが出てしまうのが、自分の身体の横に飛んできた強い打球に咄嗟に反応するときだった。
身体の右側に飛んでくる三塁線の強い打球に、左足を踏み込んで反応できずに、右足だけが動いてしまう。そのため右、右と片方の足だけを動かしてしまい、自ずと動ける範囲も限定されてしまう。