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天才司令塔ピルロが“仮免”でユーベ監督。セリエA10連覇&CL制覇へ模範はジダン。
posted2020/09/03 07:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
マエストロ(名人、達人)と謳われた天才司令塔アンドレア・ピルロが、セリエAの戦場に還ってきた。
それも、9連覇を達成したばかりの絶対王者ユベントスの新指揮官として。
「自分の監督としての可能性を信じている。自分が成功を約束された指導者であるかどうか、それはこれから残す結果が物語ってくれるはずだ」(ピルロ)
CLベスト16敗退を受け、8月8日にマウリツィオ・サッリ前監督が解任。7月末に今季のU-23チームを任せると発表したばかりのピルロを急遽トップチームの指揮官に据える電撃人事が、アンドレア・アニェッリ会長の鶴の一声で即日決まった。
9月上旬のAマッチを控える代表組を除くチームは、24日からトリノ市内のトレセンでプレシーズンキャンプ入りしており、新米監督は大過なく第1クールを終えたところだ。
アンチェロッティ、リッピも歓迎。
W杯もCLも勝ち取った天才MFの指導者転向には、かつての監督たちやチームメイトが一斉に歓迎の意向を示している。
ミラン時代の恩師カルロ・アンチェロッティ(エバートン)は、2年前に愛弟子が現役引退した際、すでに「指導者になるための資質と能力は十分にある」と太鼓判を押していたし、ドイツW杯をともに制した名将マルチェロ・リッピは「ピルロは全能の男。(今回の急な就任にも)問題などあろうはずがない」とまで言ってのけるほど、全幅の信頼を寄せている。
現役時代のピルロは、同業者が脱帽するほどテクニックとセンスに長けた名手だった。
中盤底のプレーメーカーとして絶妙なポジションから糸引く縦パスを放ち、攻撃を操るだけでなく、悪魔のようにエグいフリーキックで相手ゴールを陥れ、サッカー好きを魅了した。ピルロの妙技に惚れ惚れしたのは、ミラニスタやユベンティーノだけではなかったはずだ。
ただし、今のところ“ピルロ監督”に対するカルチョの国の見方は厳しい。
何しろ、彼には指導経験がまったくないのだ。