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小川佳純が盟友・巻佑樹GMからの監督オファーに即答した理由。「ピクシーもそうでした」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byFC Tiamo
posted2020/09/02 08:00
今年1月から関西リーグ1部のFCティアモ枚方の監督に就任した小川佳純。チームには二川ら経験豊富な選手たちが揃う。
二川孝広、野沢拓也、田中英雄。
現役時代にJ1で通算301試合に出場し、名古屋時代にはリーグ優勝も経験。華麗な経歴を持っている小川監督でも、その肩書だけでティアモ枚方をまとめることは難しい。
ただの地域リーグのクラブではない。将来、Jリーグ入りを目指しており、所属選手たちを見ると、元Jリーガーがズラリと並ぶ。ガンバ大阪で長年10番を背負っていた40歳の二川孝広を筆頭に、鹿島でリーグ3連覇に貢献した39歳の野沢拓也もいる。主将を務めるのは、ヴィッセル神戸で長く活躍してきた37歳の田中英雄だ。小川監督より長くJリーグでプロキャリアを積んできた大先輩たちがいるのだ。
「それぞれ積み上げたものがありますし、そこはリスペクトしています。当初は僕の伝え方がへたでうまくいかない時期もありましたが、意見交換しながら、すり合わせてきました。いまでは僕のやり方を理解してもらい、実践してくれています。監督の僕が選手を押さえつけて、個性を削ぎ落とすことだけはしたくない。選手って、納得できないといいプレーが出ないものです。それは僕もよく分かるから。ここまでの進め方は間違っていないと思います」
苦笑まじりの言葉には苦労がにじむ。
市船OBの秋葉監督を言葉を実感。
監督に就任してからは、お世話になった恩師や指導経験を持つ先輩たちに相談し、助言を受けてきた。同じ市立船橋高のOBである水戸ホーリーホックの秋葉忠宏監督もそのひとり。しみじみと実感している言葉がある。
「監督業はマネジメントがすべて。それが一番の仕事と言ってもいいくらいだ」
小川監督は練習前後の選手たちの立ち振る舞いをよく観察し、チームメイト同士の関係性からそれぞれの性格をつかむ努力を怠らない。個性に応じたコミュニケーションの取り方を考え、毎日のように互いの理解を深めることに心を砕く。監督になっても気遣いができて親しみやすいキャラクターは変わらない。落ち着いた口調も選手時代と同じだ。
「急に自分らしくない立ち振る舞いをしてもね。どっしり構えて、冷静に必要なことを伝えていきたいです」
目標は監督としてもJ1の頂点に立つことだが、当面のミッションはJFL昇格。単年契約で否が応でも勝負の1年となる。いまは関西リーグ制覇を目指し、強くて魅力あるチームをつくり上げることに集中している。