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中村憲剛「等々力に神様はいたな」
大怪我からの帰還と2月のやりとり。

posted2020/09/01 11:50

 
中村憲剛「等々力に神様はいたな」大怪我からの帰還と2月のやりとり。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

復帰戦でのゴールに観衆だけでなく、関係者も拍手を贈った。中村憲剛は今もなお川崎フロンターレ、そしてJリーグの顔である。

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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J.LEAGUE

「質問はすべて受け付けます」

 試合後のオンライン会見に登場した中村憲剛は、そんな風に冗談めかして切り出した。

 今シーズン、Jリーグ再開後の取材対応はオンラインで実施されている。取材時間は選手1人につき3分程度が相場で、長引いたとしても5分である。だが復帰戦をゴールで飾った背番号14は、気づけば15分近く話し続けていた。もともと、コメント力の高さには定評がある選手でもある。それでも、この日は言葉が溢れて止まらない様子だった。

 このときの会見で紡ぎ出した言葉の数々は、たくさんのメディアで取り上げられているので、ここで多くを紹介する必要はないだろう。ただ締めの挨拶を述べる前に語ったこのコメントが、印象的だった。

「等々力に神様はいたな、というのはあります。等々力じゃなかったら、こうはならなかったと思っています」

――等々力に神様はいた。彼はそう言っていたのである。

開幕前の2月に聞いたこと。

 そしてその日の深夜に更新された自身のブログでも、こんな言葉で書き始めている。

<サッカーの神様が本当にいるのなら、去年同じ場所で負ったあのケガは今日のこの素晴らしい時間を味わうための、プレーする幸せを、楽しさをもう一度この年齢で噛み締めるためのものだったのですか?と聞きたくなるくらいプロ生活18年目になる39歳のサッカー人生の中で3本の指に入るくらいの本当に最高の時間でした。>

 ふと、思い出したやりとりがある。

 それはJリーグの開幕を直前に控えた今年2月のこと。コロナの脅威は確実に迫りつつあったが、シーズン中断の事態になるとはまだ思ってなかった時期だ。選手の取材もマスク着用であれば自由にできた頃である。

【次ページ】 「そういう期間をくれたのかなと」

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