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守護神として好投続くDeNA三嶋。
「ヤスが注目される理由がわかった」 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/08/29 11:30

守護神として好投続くDeNA三嶋。「ヤスが注目される理由がわかった」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

抑え抜擢から抜群の安定感を見せる三嶋一輝。約1カ月で8セーブを挙げた。

「自分ほど失敗してきた人間はいない」

 苦い経験が自分を支えている。今では頼りになる存在だが、かつては泥のなかを這いずるような時代を過ごすこともあった。三嶋にはこの数年、口癖のように言う言葉がある。

「自分ほど失敗をしてきた人間はいないと思いますね。期待されて、それを数えきれないほど踏みにじってきた選手ですから」

 2013年のルーキーイヤーはローテーションに入り先発として6勝を挙げるも、翌年は開幕投手に大抜擢されながら、序盤で大量失点を喫し期待を裏切った。その後数年にわたり、幾度となくチャンスをもらうも結果を出すことができずファームで多くの時間を過ごすことになる。もがき苦しむ日々、「三嶋はもう限界だ」との声を耳にすることもあった。

 しかし'17年の後半になり中継ぎへ転身すると活路を見出すことになる。'18年には敗戦処理から実績を積み上げ首脳陣の信頼を得ると勝ちパターンに登板するようになり、ついに昨シーズンは71試合を投げ、チームにとってなくてはならない存在になった。

「だから僕がクローザーをやるなんて誰も思ってなかったんじゃないですかね」

 三嶋はニヒルさを少しだけ漂わせ言った。

つらくても、強がることは大事。

「苦しい経験をしてきたからこそ一喜一憂できないんですよ。まわりからいくら調子がいいねと言われても、明日の試合で足元をすくわれるかもしれない。そう思うと心の底から『よっしゃ!』とはならないんです」

 心に巣食うのは、緩むことのない警戒心だ。

「けど、それをまわりに見せちゃいけないし、一番ダメだと思うんです。つらくても強がることも大事だし、戦う姿勢や攻めていく気持ちを隙を見せることなく出していく。そこに関しては9回で投げる、投げないは関係ないんです」

 ゆるぎない三嶋の矜持。かつては必要とされていないと自暴自棄になってしまった時期もあった。辛酸を舐め、思うようなピッチングができないつらさを誰よりも知るからこそ、現在苦しみの渦中にいる年下の守護神の気持ちが手に取るようにわかる。

【次ページ】 “三嶋一輝”というイメージを変える。

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