ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
守護神として好投続くDeNA三嶋。
「ヤスが注目される理由がわかった」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byAsami Enomoto
posted2020/08/29 11:30
抑え抜擢から抜群の安定感を見せる三嶋一輝。約1カ月で8セーブを挙げた。
今も抱く「全員を見返したい」という気持ち。
三嶋の投球は、ご存じのように燃え盛る炎のように情熱的だ。正直、いつ肘や肩がぶっ飛ぶかヒヤヒヤするほどである。そう伝えると「まあ、僕もそこはちゃんと考えてケアにも力を入れています。ただ、それぐらいの気持ちでやらないと僕みたいなタイプはダメなんですよ」と、三嶋はどこか達観した表情で言うのだ。
振り返れば中継ぎとして結果を出し始めた'18年、三嶋にモチベーションはなにかと尋ねたことがあった。すると「全員を見返したい。だから結果だけを求めてやっています」と、瞳をギラつかせ答えてくれたが、あれから月日も経ち立場も変わった。今はそういった気持ちはあるのだろうか。さすがに落ち着いたと思うのだが……。
「あの……」
三嶋は一瞬言い淀み、つづける。
「やっぱり今も見返したいって気持ちなんですよね。長くファームにいた時代のあの気持ちというのは、いくら投げても、いくら抑えても満たされないんです。あのときは何かダサいというか、当時の自分に言ってやりたくなるんですよ。おい、もっとやれよって。その気持ちは一生消えないと思いますね。常に悔しい思いが自分のなかにあって、もっとやれる、もっとできるという気持ちは、ホント人に負けないと思いますね」
チーム一番の負けず嫌い。
三嶋の“飢え”は決して満たされることはない。ただ、それはチームにとって大きな力になっていることは間違いない。
すっかり失念していたが、三嶋は自他ともに認めるチーム一番の負けず嫌いだった。
「ええ、そうなんスよね」
三嶋はそう言うと、勝利後にハイタッチしているときにするような、ちょっとはにかむような笑顔を見せてくれた。
ピッチングばかりではなく牽制やフィールディングなどでも冴えを見せる9回の男。ブレない九州男児の“負けじ魂”は、シーズン終盤において、果たしてどれだけチームを救ってくれるのだろうか。