球体とリズムBACK NUMBER
ネイマール&ムバッペも封鎖成功。
CL覇者バイエルン、極上の組織美。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2020/08/24 20:00
コロナウイルス禍で大会方式が変わったとはいえ、“全勝でのCL優勝”はバイエルンの強さを象徴するものだった。
ホットラインをノイアーが阻止。
翌日の大一番は、その通りの展開で推移していった。
バイエルンはプレーエリアを前方に定め、ボールを奪われたらすぐさま囲い込んで回収し、畳み掛けようとする。対するPSGも、スター選手が揃う前線から守備意識は高い。タイトな序盤の攻防を経て、最初にチャンスを迎えたのはPSGだった。
ムバッペが左サイドから2本シュートを放ってDFにブロックされた後の18分、相手の攻撃を中盤で分断し、マルキーニョスが再び左前方へ。これを受けたムバッペがネイマールにスルーパスを送り、背番号10はシュートを放ったものの、GKマヌエル・ノイアーがギリギリのところで最初の決定機を阻止した。
押し込むバイエルンと、カウンターを狙うPSG。その構図は時間の経過とともに色濃くなっていく。前半の残りには、どちらもそれぞれの手法で何度か好機を得たが、アンヘル・ディマリア、ロベルト・レバンドフスキ、そしてムバッペのシュートはゴールに至らなかった。
均衡を破ったのはPSG育ちのコマン。
均衡を破ったのは、バイエルンのスタメンで唯一、準決勝に先発していなかったキングスレー・コマンだ。
パリ郊外で生まれ、PSGの下部組織で育った24歳のウイングは59分、右サイドのヨシュア・キミッヒの優しいクロスを頭で叩きつけ、それまで好守を続けていたGKケイラー・ナバスを破った。
カタールによるクラブ買収後、自らの居場所を求めてPSGを飛び出したコマンが至高のタイトルに繋がるゴールを決めたのだから、PSGにとってはこの上ない皮肉だ(本人は試合後、「本当に嬉しいけど、心の奥底には悲しみもある。PSGは僕のハートの一部だから」と世話になった古巣を気遣った)。
追いかけるPSGはその後、4枚の交代カードを切ったが、誰としてゲームチェンジャーにはなれない。過去2戦で得点したアンカーのマルキーニョスが果敢に攻め上がるも、ゴールは遠い。最後の逆襲もムバッペ、ネイマールと繋がったものの、10番のシュートは力なく枠を外れていった。