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誰よりも批判されたFA投手の逆襲。
大竹寛の生き方が心から格好いい。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2020/08/21 11:30
セットアッパーの大竹寛とクローザーのデラロサを中心に巨人のブルペンは回っている。
腐らず二軍で投げ続け、ついに転機が。
肩も肘も問題ない。恐らく、これが生え抜きの功労者なら一軍でのチャンスの数も違っていただろう。FA選手は入るときは歓迎されるが、結果が出なくなると真っ先にポジションを失う立場だ。
もし、自分が大竹だったら、会社や上司のせいにしないで、腐らずジャイアンツ球場のマウンドへ上がれていただろうか? 正直、その自信はない。
'18年オフの契約更改では減額制限超えの50%減、2625万円ダウンの推定年俸2625万円でサイン。文字通り崖っぷちの大竹だったが、ここでひとつの転機が訪れる。自分を巨人に呼んだ原辰徳監督がチームに復帰したのである。
そして、原監督は大竹をリリーフで再生する。戦力外寸前だった男は'19年シーズン中盤からブルペンの救世主となり、32試合、4勝0敗12HP、防御率2.77という成績を残し、通算100勝も達成。
5年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献すると、年俸も5000万円まで戻し、なんと秋のプレミア12の日本代表にも松田宣浩につぐ年長選手として追加招集された。
温厚な大竹が、マウンドでは鬼の形相。
2020年は2月下旬から右肩周辺の肉離れで離脱したが、7月上旬には一軍復帰。決してあきらめない男は、まだまだ健在だ。8月も勝ちパターンの一角を託され、12試合連続無失点中(8月19日現在)とベンチから信頼を寄せられている。
丸っこい顔の人の良さそうな大竹がいざマウンドに上がると、鬼の形相で徹底的に内角をシュートで攻めまくる。14日の中日戦では3番手として7回表に登板、2者連続でバットをへし折ってみせた。