話題になっていない理由を聞くと……。

　これだけの「能力」を兼ね備えた捕手が、どうして話題になっていないのか。  

　北信越の事情にくわしいあるスカウトの方に、ちょっと訊いてみた。

「あのサイド気味のスローイングは、肩やヒジの負担が大きい。壊しますよ」

　やっぱり“そこ”か……と思った。

　しかし捕手・室木太陽のスローイングは、確かにヒジは横の回転に見えるが、ちゃんと軸足の強烈な蹴りで投げられている。スナップや腕力に頼った「腕投げ」では決してない。

「自分、もともとピッチャーなんですよ。普通のキャッチャーとは投げ方違うんですけど、監督さんからも、それがお前のスタイルだから今のまんまいけって言われています。張ることはありますけど、故障歴はありません」

　そうか！　と思った。

　独特の腕の振りから、室木太陽が投じる二塁送球は、「ピッチャーのボール」なんだ。だから、唸るような勢いで、向こうに行くほど伸びていくんだ。

石川では公立にも逸材が隠れている。

　4回からリリーフのマウンドに上がった遊学館・高田竜星は、昨秋とは一変。すっかり逞しいシルエットのユニフォーム姿の「パワーピッチャー」になっていた。  

　6イニングを3安打5奪三振2四球。室木太陽のホームラン1点に抑えたが、勝利を引き寄せるまでには至らなかった。

　地面に突き刺さるような激しい変化のスライダーと、ホップするように見える高めの速球。打者の目線を高低にブレさせながら、渾身のピッチングを展開して、3年間の高校野球生活を全うした。

　この試合、スターティングメンバーの5人が「2年生」の遊学館。

　新チームでは、4番の土倉瑠衣斗左翼手（184cm85kg・右投右打）がエースとなって、3番の強肩捕手・ 新保朋也（174cm77kg・右投左打）と新たなバッテリーを組むのか。

　星稜、日本航空石川がいて、この日は金沢商が遊学館を、津幡が小松大谷を破って、それぞれ準決勝に進んだ。

　公立校にとんでもない「逸材」が隠れていて、公立勢にも骨っぽいチームが控える石川の独自大会だった。