こんなキャッチャーがいたのか……。

　金沢商捕手・室木太陽。

　均整抜群の体躯は、180cm78kg。鉄砲肩のショートストップが捕手をつとめているような、軽快なフットワークと身のこなし。

　こんなキャッチャー、いたんだ……。

　今はインターネットの時代だから、玉石混淆、全国のいろんな選手がいちはやく伝えられるが、そんな「情報網」でも、この名前に接したことがない。

　すでに、150キロに達する剛球スリークォーター・加藤優弥（3年・175cm78kg・右投右打）を擁する金沢龍谷を、完封で破っている金沢商。

　その時も、スリークォーターのエース・米澤拓海の快投ばかりが報じられて、捕手・室木太陽には触れられてはいなかった。

「一網打尽」みたいに思えるインターネットの網の目にも、意外とまだ、いくらか“すき間”はあるようだ。

刺すよりも走らせないのが最強の肩。

　試合が始まると、遊学館・高田竜星が先発しなかったこともあり、金沢商の捕手・室木太陽ばかりに目が行ってしまう。

　イニング間の投球練習後のセカンドスロー。

　捕って、間を作って投げると、マウンド上の投手のベルトほどの高さで、ものすごい勢いのボールが、あっという間に二塁ベースに届く。

　投手に向かって、「このやろー！」とばかりに投げたボールが、投手のグラブをビシリと叩く。この動作を二塁ベースとの距離でやってしまう。それほどの「鉄砲肩」だ。

　この肩見せられたら、ちょっとスタートきれないよなぁ……。

　捕手・室木のほうも、そこが狙いで見せつけているようだ。盗塁を刺すのも強肩だが、相手の攻めの選択肢から「足」を消去してしまえるのが、いちばんの「強肩」であろう。

【次ページ】　驚きの二塁送球タイムに、4番の仕事も。