「キレ、回転もレベルが違った」

　3打席目は二死走者なしからの勝負。

　高橋は初球から4球続けてストレートを投じる。150キロを超えたのは3球目だけだったとはいえ、すべて146キロを超えていた。

「球速だけでなく、ボールのキレや回転もレベルが違いました」

　前川がこのように舌を巻くほどだった。カウント2－2から、最後は高橋がツーシームで空振り三振を奪った。

　4打席目が最後の対戦となった。

　前川は高橋が投じた初球のストレートをファール。2球目のツーシームを空振りした後、149キロのストレートは見送ってボール。そして1ボール2ストライクの4球目ツーシームを、右翼前へはじき返した。それまでストレートに差し込まれ、ツーシームに翻弄されていたが、見事な適応力を見せた快打だった。この後、前川は代走を送られてベンチに退いた。

「打席での威圧感がすごかったです」

　試合は延長10回、タイブレークの末に中京大中京が4－3で勝利した。中京大中京・高橋源一郎監督、智弁学園・小坂将商監督ともに「決勝戦のつもりで戦っていた」と振り返った。それほどまでに両チーム全てを出し尽くした試合だったが、2人が対決した4打席の空間は格別だった。

　高橋は前川との4度の対戦を振り返っていた。

「打席での威圧感がすごかったです。だからこそ気持ちが熱くなれましたし、その気持ちを保つことができたのでよかったです。最後（の4打席目）は打たれてしまったのは悔しい。（前川選手は）今後、プロに行って活躍するような選手になると思います」

　プロ志望届を出すか、大学進学するかをまだ決めていないという高橋だが、この1試合で得た経験を噛み締めていた。

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