「4番打者として見つめ直さないと」

　もちろん2年生の前川にとっても貴重な体験となったはずだ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で春の選抜、夏の甲子園ともに中止。各都道府県の独自大会こそ開催されたものの、3年生を主体に戦うことがメインとなったことで、前川はこの夏、その力を発揮する場が限られてきた。

　その中で1試合とはいえ、プロ注目の投手と対戦できたことは大きな財産になっただろう。前川もこのように語っている。

「ベストボールを投げてくると思っていましたし、自分もベストスイングで返して結果を出そうと考えていました。でもやっぱり、速かったです。絶対に負けないという気持ちがボールにこもっていて、自分も力で対抗しようとしすぎました。

　最後の打席は修正して力を抜いて合わせることができましたが、あれを1打席目のチャンスの時に出さないといけない。4番打者として（打撃を）見つめ直さないといかんな、と思いました」

あのレベルの投手を普通に打てるように。

　2年生の前川としてみれば、世代を代表するピッチャーがこれほどまでに質の高いボールを投げてくるという経験を得たはずである。昨夏は1年生ながら4番を務めたものの、勝負所で大事な1本を打てなかった。その悔しさを1年間持ち続けてきた中で、この4打席は未来につながるだろう。

　前川は希望に満ちた表情でこう振り返っている。

「プロのレベルを考えると、ああいったレベルの投手を普通に打てるようにならないとプロ野球選手になれないんだなと思いました。課題は下半身の安定ですね。最後の打席のように、力を抜いて強いスイングをするには下半身を安定させて、体の回転で振ること。しっかりその技術を身につけられるようにやっていきたいです」

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