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トッティ以来セリエAで欧州得点王。
凡庸扱いのインモービレ、遂に栄光。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/08/17 11:30
ラツィオでコンスタントにゴールを積み重ねてきたインモービレ。30歳でのゴールデンシュー獲得は彼のキャリアへの祝福だ。
インザーギ監督は彼の実力を見抜いていた。
もうこうなると、メディアやファンの間でインモービレへの“レッテル”が定着してしまうことになる。
海外挑戦では異なる文化に馴染めなかったという仕方がない面もあったはずなのだが、ドイツでは「縦へのダッシュは出来てもボールを持つと遅い」と叩かれ、スペインでは「足元がおぼつかず周囲との連係が取れない」とプレー面での問題として非難される。そしてロシアW杯を逃したことで、結果にうるさい本国イタリアでは「凡庸なタレントを生み出すイタリアサッカーの象徴」とまで言われるようになったのである。
しかしラツィオには、彼の能力を正しく評価してくれる指導者がいた。シモーネ・インザーギ監督その人である。
足元がそれほど器用ではなく、屈強な体格でもないから前線でのキープも不得意だという粗をカバーしつつ、ゴールセンスという長所を存分に引き出すようなチームづくりをしたのである。
ラツィオのインモービレ周りのプレーとは。
ボールを保持した時には、あえて前線に張ることなく少し下がり、ディフェンダーからフリーになってもらう。
攻撃の際は司令塔ルイス・アルベルトを軸に長短のパスで周囲を走らせ、前線では屈強なMFセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチが飛び出してハイボールに競り合う。
チームプレーが不得手と言われたインモービレにかかる負担をうまく周囲に割り振りつつ、本人にはゴールに集中してもらったのである。
こうなると、インモービレのゴールセンスは冴えわたる。エリア内ではフリーのポジションをとってシュートを狙い、得点を量産。2017-18シーズンには29ゴールを記録して得点王となり、そして連携の高まった4年目の今シーズンに大活躍を果たした。
足でも、頭でも、エリア内でも、ミドルレンジからでもシュートを決めた。PKでも強く、15本中14本に成功。ゴールを量産してチームを首位ユーベに肉薄する成績へと導いた。