球体とリズムBACK NUMBER
バイエルン、斜陽のバルサを蹂躙。
ミュラー「このインテンシティだ」
posted2020/08/17 11:50
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
FCバルセロナ 2-8 バイエルン・ミュンヘン
こんなスコアを誰が予想しただろうか。現在のチーム状態に差があるとはいえ、欧州を代表するクラブ同士によるチャンピオンズリーグ準々決勝だ。その前に行われたふたつの8強の争いは、どちらも終盤に勝負が決する接戦だったし、対戦チーム同士の実力差はこのカードの方が小さいと思われた。
だが公式戦18連勝中のドイツ王者は、斜陽のバルセロナを完膚なきまでに叩きのめした。この試合の敗者にブラジル人はいなかったけれど、かつて世界をリードした王者をモダンな進化を遂げたドイツのチームが蹂躙していくさまは、2014年W杯のミネイロンの悲劇──ブラジル 1-7 ドイツ──を想起させた。
今季21アシストのミュラーが口火。
6年前の同じ得点差の試合と同様に、勝負は前半のうちに決した。口火を切ったのも、あのブラジル戦と同じくトーマス・ミュラーだ。
ニコ・コバチ前監督とそりが合わなかった30歳のドイツ代表アタッカーは、昨年11月の指揮官交代(当時アシスタントのハンジ・フリックが昇格)を機に復調。ブンデスリーガでは今季リーグトップかつキャリアハイとなる21アシストを記録していたが、この日は高い決定力を見せつけた。
開始4分、左サイドのイバン・ペリシッチからのクロスを、ミュラーがダイレクトで前方のロベルト・レバンドフスキとワンツー。戻ってきたボールを左足で巧みに合わせて、バイエルンが先制した。
その3分後には、ジョルディ・アルバの左からの折り返しを、バイエルンのCBダビド・アラバがクリアし損ねてオウンゴール。スコアがタイに戻ったこの時点では、やはり互角の戦いになることも予想された。
実際、その後の10分ほどはバルセロナが攻め立て、ネウソン・セメドのスルーパスにルイス・スアレスが抜け出してゴールに迫ったり、リオネル・メッシが内巻きのクロスでポストを叩いたり、長い距離をドリブルで進んでシュートまで持ち込んだりした。