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『バトルスタディーズ』の原点。
作者が語る、あの夏とPL学園。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/08/12 11:40
『バトルスタディーズ』は暴露ではなく、なきぼくろ氏のPL学園への愛の結晶なのである。
入部直後はお客さん、しかし……。
ただ想うだけではくぐれぬPLの狭き門。なきぼくろが凄かったのは、そこから実際にシニアの関西大会で最優秀選手に選ばれるなど、選手としてトップクラスの成績を残し、本当にPL学園のスカウトの目に留まったことだ。
時は折しも2001年。なきぼくろはPL学園硬式野球部に入部する。2つ上の3年生は今江敏晃(元ロッテ→楽天)を主将とし、エース朝井秀樹(元巨人)、桜井広大(元阪神)、小斉祐輔(元楽天)らがいた、今でも最強世代と囁かれる黄金世代。果たして巷間で言われている噂は本当なのか。上重の笑顔が真実なのか。なきぼくろは、自らの体験を以て学んでいく。
「入部して間もない頃は、本当にお客さん扱いで、『先輩たちめっちゃ優しいな』、『思ってたのと全然違うわ』なんて同級生と軽口叩いていたんです」
怒鳴られるより、見放される方が怖い。
だがその後、本入部となるや、なきぼくろの予想通りに過酷な寮生活が待っていた。詳細はマンガにあるとおり、24時間野球漬けの生活。PL伝統のルールの元、神経を張り詰め、深夜まで洗濯板でユニフォームをこすり、寝不足と疲労でメシも喉を通らなくなった。気がつけば入学時に65キロあった体重は45キロまで激減していた。
「寮生活はちゃんと厳しかったです。だけど、それ以上に先輩たちの存在がとてつもなく大きかった。もちろんコワいですよ。ただ、そのコワさの部分が勘違いされがちなのですが、暴力でボコボコにいかされるとか、恫喝に怯えるとか、そういう類のコワさじゃないんです。PLの選手は全員が100%自分の仕事に集中しているんです。そのピリピリした空気を自分のミスで邪魔してしまうというコワさ。
練習をサポートするために1年生はどうやって動くかを考えなければいけないのに、足手まといになってしまうというコワさですね。別にミスしても怒鳴られるわけじゃない。『ありがとう。もうええわ』って優しい言葉でもむちゃくちゃ傷つくし、正直、シバかれた方がまだマシです。
1年生にとって2年生は黒子のように存在感がないんですけど、3年生は1年生なんて本当に眼中にない。僕は桜井広大さんの付き人になったのですが、仲が良かったと言ったら怒られるかもしれないけど、本当によくしてもらいました。『オマエ、カゲ(隠れて規則破る)してへんやろな』っておちょくってくれることもあれば、片親の僕に『親元離れて寂しないか。電話したくなったら俺に言うてこいや』とテレフォンカードをくれたり。
3年生は、野球の実力も人間としての存在感のデカさも凄すぎて、3年間ここで過ごせば先輩たちのような男になれるのかという憧れが強くなっていました」