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『バトルスタディーズ』の原点。
作者が語る、あの夏とPL学園。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2020/08/12 11:40

『バトルスタディーズ』の原点。作者が語る、あの夏とPL学園。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

『バトルスタディーズ』は暴露ではなく、なきぼくろ氏のPL学園への愛の結晶なのである。

なきぼくろがPLで学び、伝えたいこと。

『バトルスタディーズ』の軸となっているものは、“強さ”である。作品を通して“強い者には理由がある”ということを提示し続けている。強さとは、甲子園通算96勝。全国制覇7回という勲章だけではない。本当の強さとは負けた後、困難が訪れた時、腐るか。それとも希望を失わず闘うことができるか。それは逆転のPLと讃えられた土壇場でも決して諦めない強さ。なきぼくろがPLの3年間で得た学びだ。

「強いチームに憧れてPLに入りましたけど、僕の人生はあんまり勝ったことがないんです。PLでも出場停止だったり、レギュラーを外されたり、苦しいことばかりでした。だけど、やっぱり、勝った負けたやなかった。

 勝ちは勝ちのままやないし、負けは負けのままじゃない。取り返しのつかないようなバントの失敗をしたてもそこで次に何をしなきゃいけないんやと頭を回転させないと、置いてけぼりになる。声を出す、守備で挽回する。そういうことを次々と考えていかないとどんどん臆病になっていくんですよ。

 強くなるためにはどうするか。問題が起きた時、人間は毎回、岐路に立つわけです。そこで自分がどんな判断ができるか。自分次第で、腐ることもできるし、逃げることもできる。前を向いて希望を持ち続けることだってできる。そこで強い人は、しっかり選択を行っている。それがPL学園で僕が学んだことです。そういうことを、マンガの中で伝えていけたらと思っています。もちろん、説教臭くならないように、コミカルに、です」

カタチだけの復活ならしない方がいい。

 また今年も夏が来る。彼の母校であるPL学園は、2016年を最後に休部状態となったまま動きを止めている。なきぼくろはマンガの中でも、PL学園再生のために必要なものを示唆するような過激ともいえるアイデアを提示している。

「もちろんPLが復活して欲しいっていう思いがあって、このマンガを描いていますが、ただカタチだけ復活するだけだったらせんほうがいいんです。これは僕の個人的な意見ですが、復活するなら本当にイチから。大阪で強い高校から今の野球はどうなっているのかちゃんと聞きながらです。いつまでもブランドに頼るんではなく、本当にイチから復活して欲しいと願っています。それができる強さがPLにはあると思っています」

 今も尚、困難が目の前に立ちはだかっている永遠の学園。この難局を前にどう立ち向かっていくのか。あの学び舎で3年間を過ごしたOBたちの存在がある限り、このまま終わるはずがないと信じられる。バトルスタディーズはそんな彼らであり、復活を願う我々の心にも火を灯す。

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