野球のぼせもんBACK NUMBER
陽性判定から試合可否の決定まで。
奮闘のホークス球団、緊張の舞台裏。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/08/06 08:00
試合の中止を告知するPayPayドームの張り紙。突然の事態に多くのファンが混乱した。
「主催ゲームではないので……」
ここで会見の1つのポイントになったのが、4日からの試合開催の可否だった。
2日の西武戦は、ファームにいた長谷川の感染を確認したことで中止を決めていた。しかし、今回は一軍のスタッフに陽性判定者がいたにもかかわらず、チームは試合を行うために仙台へ移動をした。
「我々の主催ゲームではないので当球団の判断とはいかない。我々は陽性判定を受けたスタッフがいたことについて、NPBや専門家チーム、所轄保健所と連携をとり、その指示していただく内容をもとに検討していく立場だと考えている」
三笠GMはそのような趣旨のコメントをした。
また、「(スタッフの陽性判定が)影響がないとは言い切れない。ガイドラインに記載されていることに関しては、(試合の)実施可否に関しては2時間前。それがひとつのメドになる」という発言もあり、一部メディアでは「4日楽天戦は中止の可能性も」と報じるところもあった。
開催の判断基準は公表されていない。
NPBの公式サイトにはトップページの上部に「NPB新型コロナウイルス感染予防ガイドライン(有観客開催)」のリンクがある。そこから飛ぶと、77ページにわたって基本方針や予防措置が記載されており、感染者が出た場合の対応についても載っているが、それによる試合開催の可否判断については見つけることが出来なかった。
こうなると、たまらないのはファンである。特に球場で観戦を予定しているファンは悲鳴を上げたに違いない。プレーボール当日の2時間前ならば、すでに準備を整えて球場に向かっているファンも少なからずいるだろう。冒頭の看護師さんのように遠方から楽しみに訪れるファンもいる。
結果的に翌4日、ホークスは13時45分から会見を行い、楽天戦以降のスケジュールについて通常どおり行うことを明らかにした。
現在、各球場とも上限5000人しか入場が許されていない。普段は3万人から4万人という来場者が当たり前のプロ野球だから少なくも感じてしまう。しかし、そこには人間の1人1人の感情が込められている。今回、我々は感染症と向き合うことで生命の大切さや尊さを改めて考えさせられた。野球場に応援に来るファン1人1人の重たさも感じてしかるべきである。