野球のぼせもんBACK NUMBER
陽性判定から試合可否の決定まで。
奮闘のホークス球団、緊張の舞台裏。
posted2020/08/06 08:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
「まだ結果出てないのー」
「結果まだ!!!!????」
「ねーもーなに!!!」
3日(月)の夜、都内で働く看護師であるその彼女は、ひどく狼狽したようなツイートを連発していた。
医療従事者である彼女の生活は、新型コロナウイルスの感染拡大により忙しさを増していた。基本的に脳外科を担当しているが、勤務している病院が5月に「発熱外来」を始めたことで、各科の看護師は持ち回りで患者のケアにあたることになったという。
その彼女は陽性者と直接の接触はまだないというが、電話をすると「今は大丈夫だとしても、いつ私も感染してしまうか分からない。ならば楽しめるときに野球観戦をしておきたい」とのこと。
翌日からようやく連休がとれるということで、大好きなホークスの試合を観戦するためにイーグルス戦が行われる仙台まで足を運ぶらしかった。
しかし、肝心の試合が開催されるか否か分からなかった。そしてなにより、愛するホークスに今、何が起きているのか――その不安に苛まれていた。
長谷川勇也の陽性判定から事態が動く。
7月末から、ホークス球団では立て続けに新型コロナウイルス感染者が見つかった。最初は球団職員、さらには委託先アルバイト従業員が罹患したことが確認された。そして、ついに8月1日(土)の午後10時過ぎ、選手からも感染者が出た。現在ファームで調整中の長谷川勇也外野手が同日に受けたPCR検査で陽性と判定されたことが球団から発表された。
長谷川は7月31日の就寝時に咽頭に若干の違和感を覚え、同時に37.3度の微熱があった。翌朝7時には咽頭の違和感は消失したものの、37.2度の微熱が続いていた。そのために病院を受診し、PCR検査を受検。15時ごろに陽性が確認された。同日夜には発熱などの症状はなく、その後は保健所の指示に従い自宅待機をしているとのことだ。
長谷川は今季5年ぶりに開幕スタメンを勝ちとり5番打者で出場した。その後は4番打者も務めていたが、7月7日に右脇腹筋挫傷で登録抹消。28日のウエスタン・リーグで実戦復帰して翌日には本塁打を放っていた。一軍復帰に向けて動き出したその矢先の出来事だった。
また、長谷川の発症前の行動履歴も明らかになり、球団ファーム施設と自宅を自家用車で往復したのみで外出、会食への参加もなかったことも分かった。実直な性格で、まるで令和を生きる侍のような男である。対策は徹底していたはずだ。それでも感染を防げないこのウイルスの怖さを、我々は改めて思い知った。