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コロナ禍に揺れる米で女子ゴルフ再開。
優勝逃した河本結と悩める各選手事情。
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byGetty Images
posted2020/08/03 20:00
今季から本格的にツアー参加となった河本結は、4戦目で優勝争いに絡む4位に。20日からの全英女史OPにも期待がかかる。
ツアー中断期間を癒やしにあてた選手も。
精力的に動くことだけが正解ではない。
野村敏京は、このツアー中断の5カ月の間、ゆっくり休養することを選んだ。
「これくらいなら戦えるかな……と思っています」と試合前に言った。
「2月のオーストラリアの時は、あんまり腰の調子がよくなかったんですが、すごい良いタイミングで休めることができたので」
野村はここ2年ほど、腰痛に悩まされてきたのだという。
「まだ気をつけないといけないんですけど、明らかにツアー中断前より状態がいいので、ゴルフに自信があるというよりも、落ち着いて試合に臨めるという感じです。今の状態だったら『全然いけるな』って」
とはいえ、プレーではフラットな気持ちで臨めるようになったが、試合以外のことで神経を使うことになったとも言う。
「人数制限するため、練習ラウンドは予約制です。また、ゴルフ場内で食事を出来ないので、早朝にカフェなどに寄ってお昼ご飯を買って試合会場へ行き、御飯時に駐車場の車の中で食べることになりそうです」
最高気温30度前後で湿度の高いオハイオ州の夏において、車の中に数時間置いてても大丈夫な食べ物となると、色々限られてくる。車内にクーラーボックスを用意した選手もいるという。新たな試合のルーティンに慣れるまで、この状況に戸惑うことはしばらくは続くだろう。
河本「まずはゴルフが出来る幸せを感じながら」
今回、話を伺った全ての選手が「移動時」に不安を感じていた。
米ツアーは海外勢の活躍がめざましいため、年々、米国外の試合を増やしている。その分、他の米スポーツより選手の国際線に乗る機会が特に多い。
全試合出場に意欲を見せるヤンは、空港に行って飛行機に乗る時が心配だと言う。
「毎週のように宿泊先も変わりますから」
ムーアは無自覚で陽性になることを懸念する。
「米男子ツアーで症状がないまま陽性と判断される選手がいます。自分がそうならないことを願っていますが、もし陽性と判断された場合、すぐに自宅に帰りたいです。他人に感染するリスクがなければ、私自身も安心できます」
ツアー機構も手をこまねいているわけではなく、感染予防と防止のため最善を尽くしている。
しばらくの間、無観客試合を予定し、毎週PCR検査を実施する。選手や大会関係者用に医療系のスポンサーから布マスクを提供が決まった。米男子ツアーと比べると微々たる額だが、陽性と判断された選手とキャディに対して隔離期間中の給付金を支払う……などなど。
ただ、どんなに対策をしても非常に感染力が強いウイルスのために、大リーグなど特に選手の移動が多いスポーツジャンルでは感染を完全には防ぎきれていないのが現状だ。
「まずはゴルフが出来る幸せを感じながらプレーすることが良い成績に繋がると思う」
そう言って、大会初日のホールアウト後に河本結が大会広報に「Very Happy!」と自身の気持ちを表した。
ワクワク、不安、緊張……選手の色んな思いが入り混じった前例のないツアーが、ついに再開した。