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23年前の甲子園で投げ合った
石川雅規と和田毅の“負け方”。

posted2020/08/11 07:00

 
23年前の甲子園で投げ合った石川雅規と和田毅の“負け方”。<Number Web> photograph by KYODO

石川(写真)は青学大を経てスワローズに入り、通算171勝。和田は早大からホークス入りし、同132勝(7月20日時点)。

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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KYODO

 秋田商と島根の浜田が夏の甲子園の1回戦で対戦した。上背のない3年生エースと細身の2年生エース、2人のサウスポーが投げ合う。スピードは140kmにも満たず、プロから注目されるようなピッチャーではない。23年前のことだ。

 その彼らが今、プロの第一線で投げ続けている。いかに甲子園の女神が気まぐれでも、そんな未来は思い描けなかったはずだ。秋田商の背番号1が石川雅規、浜田のエースは和田毅。40歳の石川は今年、史上5人目となる40代での開幕投手を務め、39歳の和田は開幕2戦目に先発し、勝ち星を重ねている。

 1997年8月11日――。

 上背がなく、ユニフォームがダブつく石川は、大きめの帽子を目深にかぶっていた。石川は言っていた。

「あのときは浮き足だって緊張していたので、自分のことで精一杯でした。クイックも身についていなかったし、よくあれで全国大会に出てるな、というピッチングでしたね」

 一方、2年生だった和田は、アバウトながらも、高めへキレのあるストレートを投げ込んでいた。

「あの試合の前の練習試合でフォアボールを連発、監督に説教をくらって、悔し泣きをしたんです。だから『絶対に見とれよ』『見返してやる』と反骨心を持って投げていました」

「勝ちたい」と「勝ちます」の差。

 9回裏、2点を追う秋田商はミスにつけこんで同点とし、なお満塁でバッターは石川。ところが和田はバントの構えを見せる石川にストライクが入らない。石川が振り返った。

「ノースリーになったときの和田投手のぼう然とした表情が今も脳裏に焼き付いています。口をパクパク動かして、何かを言ってたんです。『入ってくれ』とでも言ったのかな」

 和田は押し出しのフォアボールを与え、秋田商は逆転サヨナラで浜田を下す。しかし、続く2回戦で石川は浦添商に8失点を喫して敗退。石川はこうも言っていた。

「甲子園で強豪のユニフォームを見ると、『おおっ』と思うじゃないですか。実際、僕らは甲子園で『勝ちたい』と言いますけど、強いチームの選手は『勝ちます』と言える。そういう気持ちの差があるだけで、秋田と全国との力の差は、そんなになかったんじゃないかと思うんです」

 どんな負け方をした選手にも未来はあると、石川と和田が示している。

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