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チェルシーに感じる未来への希望。
ランパード・チルドレン今季通信簿。
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2020/07/30 11:30
ハドソン・オドイのゴールを祝福するエイブラハム(9番)やメイソン・マウント(19番)。チェルシーの未来は彼らにかかっている。
出世頭は万能メイソン・マウント。
まずはメイソン・マウントだ。今季のチェルシーの出世頭は彼で間違いないだろう。
昨シーズン、レンタル先のダービー(2部)で監督を務めていたランパードと共闘したマウントは、チェルシーに復帰した今季早々から存在感を発揮した。
マンチェスター・Uとの開幕戦でトップチームデビューを果たすと、次節のレスター戦でプレミア初ゴール。その後もレギュラーに定着し、今季はリーグ戦37試合に出場、7ゴール5アシストの数字を残した。
また2019年9月には20歳にしてイングランド代表デビュー。ここまで6試合に出場している。
彼の持ち味は高水準のパス、ドリブルと非凡なゲームメイク技術。加えて献身的な守備もいとわない姿は、現代サッカーで求められるミッドフィルダー像を体現している。またMFながら得点感覚に優れるあたり、ランパードの現役時代に重ね合わせる人も少なくない。
何より監督にとってありがたいのは、本職のトップ下だけでなくセントラルMF、左ウイングもこなせるユーティリティー性だろう。これはマウント自身の起用法はもちろん、ランパードが採用するシステムでも選択肢の幅を広げている。これこそがランパードに「メイソンのことはとても頼りにしている。ダービーでもそうだったし、チェルシーでもだ」と言わしめる所以だろう。
指揮官の心をつかみ、トップチーム1年目で主軸にまで成長したマウントは、この先何年にもわたりチェルシーの攻撃を司る存在となりそうだ。恩師のようにクラブの象徴になる日も、そう遠くないかもしれない。
“9番の呪い”を解いたエイブラハム。
そのマウントに匹敵するブレイクを見せたのがタミー・エイブラハムだ。なにしろ今季15得点でチーム得点王になったのだから、もはやエースと呼ぶに相応しいだろう。
彼もまた、昨季レンタルされた当時2部のアストンヴィラで26ゴールを挙げ、その活躍が認められる形で今季からチェルシーに戻っている。
F.トーレス、ファルカオ、モラタ、イグアインらが背負い、軒並み失格の烙印を押されてきた、いわく付きの背番号9を任されたエイブラハムは開幕からゴールを量産した。第3節ノリッチ戦から3試合で7ゴールの爆発を見せると、その後もコンスタントにゴールを挙げて”9番の呪い”を払拭してみせた。
第24節のアーセナル戦で負傷して以降、後半戦は調子が下降したものの、チェルシーが前半戦から上位をキープできた要因の1つには明らかにエイブラハムの好調があり、その功績は大きい。