欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
2019-20ブンデス日本人総括。
遠藤航、原口元気、宮市亮編。
posted2020/07/22 11:30
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
picture alliance/AFLO
今季のブンデスリーガ2部を2位でフィニッシュして、見事1部リーグ復帰を果たしたシュツットガルト。2部降格から1年での1部復帰を果たすために、2部最高額の人件費をかけて戦力を揃えていただけに、昇格はある意味順当な結果とみられてはいる。だがもし遠藤航がいなかったらどうなっていたか。そう考えるとゾッとする。
選手個々の能力が高くても、サッカーはそれだけでは機能しない。また、ボール保持率を高めて決定機を数多く作っても、点が取れなければ試合には勝てない。そして堅実な試合運びができないと、カウンターやセットプレーで失点を喫してしまう。
事実、今季のシュツットガルトは不用意な試合運びや軽率なミスにより勝ち点を落とす試合がかなりあった。昇格争いのライバルと目されていたハンブルガーSVもそのような悪循環から抜け出せず、残り2試合で4位に転落して昇格を逃した。
正直、シュツットガルトが同じ運命をたどる危険性もあったのではないかと思う。チームには、何かあったら崩れていってしまうような不安定さがあった。
遠藤はチームの要になっていく。
そんなチームが崩壊せず今季を乗り切ることができたのは、遠藤がぶれない芯となったからだ。開幕後に加入したことで当初は出場機会を得られずにいたが、第14節のカールスルーエとのダービーで初めてスタメンに起用されると、中盤で縦横無尽に駆け回り一気にポジションを獲得。その後、遠藤なしのチームは考えられないほどの存在感を発揮するようになった。
相手チームは、シュツットガルト戦となると自陣深くで守り、じっくりとミスを誘って素早いカウンターからゴールを奪おうとするのだが、遠藤はそのカウンターの起点をことごとく潰した。攻撃を仕掛けようとするところにすっと顔を出して、ボールを奪取する。コロナ禍で無観客試合になる前、遠藤のカウンター潰しに対してサポーターが大きな拍手を送るシーンを何度も見た。そのプレーの大切さを、みんな理解しているのだ。